エピローグ
土方鈴とジャンヌ・ダヴ―、それぞれが色々と向かい合って、自分なりの物思いに耽っていると。
二人から少し離れたところにいる岸澪と村山愛の会話が、風に乗って届いてきた。
その会話の内容が、耳に届いた二人は共に笑いあった。
「もしものときは、自裁する。岸澪は気軽に言っているようね」
「村山愛は、本当に岸澪がそうしたら付き合うつもりのようですよ」
鈴とジャンヌは、お互いに特大の猫を被り合った会話をした。
だが、お互いに相手の意図を看破し合っている。
そうしたことから、結果的にだが、鈴の方が先に折れた。
「極悪女どもに彼、夫を委ねる訳には行かないわね。私も自裁して、夫の下に向かうわ」
鈴は鼻を鳴らすような口ぶりで言った。
「確かに貴方が赴いた異世界では、貴方が妻でしたからね。とはいえ、別の異世界だったとはいえ、私も内妻でしたし、それからすれば、内妻として悪女に彼を委ねる訳には行きませんね。私も自裁して、内夫の下に向かうことにしましょうか」
鈴の言葉を聞いたジャンヌも言いだした。
「貴方、カトリック信徒でしょう。カトリック信徒が自裁して良いの」
鈴は言ったが、明らかに揶揄するような口調だ。
実際、ジャンヌも鈴と似た表情を浮かべながら、そう言っている。
「生まれ変わりとか、前世とか、そんなのカトリックの教えに明らかに反するモノ、そんな記憶を持つ私は、カトリック信徒とはいえ、堅い司祭に言わせれば、カトリック信徒に明らかに反する存在ですから、自裁してもそう問題ではないでしょう」
ジャンヌは更に言い募り、その言葉を聞いた鈴は苦笑するしか無かった。
暫くして苦笑を収めた鈴は言った。
「本当に困ったわね。これまでの異世界体験から言えば、お互いに記憶や経験を積み重ねた状態で、異世界に転移というか、転生するのよね。貴方が相手になると、私は苦戦することになりそうだわ」
だが、その口調の裏では、自分が負ける訳が無い、という自信を垣間見せている。
それを聞いたジャンヌも、自分が負ける訳が無い、という自信を垣間見せながら言い返した。
「確かに仰る通りで、お互いに記憶や経験を積み重ねた状態で、異世界に転移というか、転生することになりますね。私も貴方が相手では、苦戦することになると考えますわ」
だが、その裏ではお互いに相手だけが好敵手だと見なし合っていた。
裏返せば、岸澪や村山愛を共に歯牙にも掛けていないのだ。
更に言えば、相手もそう考えている、とお互いに認め合っている。
そうしたことから、暫く沈黙し合った後に、ジャンヌが言い出した。
「鈴ですが、私からしてみれば、ある意味では親友ですわ。それ以上に恋敵ですが」
それを聞いた鈴も言い返した。
「奇遇ね。私も同様に考えるわ。貴方は親友にして、恋敵よ」
そう言いつつ、二人は共に考えた。
親友にして恋敵とは、本当に奇妙な関係としか、言いようが無い。
だが、同じ人を好きになって、更にその人はお互いにとって、共に50年余りを過ごして、死ぬまで相思相愛だった末に、改めて巡り合えた人といえる存在なのだ。
そうしたことからすれば、相手は明らかな恋敵としか、言いようが無いのだが。
その一方で、好きになった人、彼のことについて、深く語り合える友人はお互いしかいないのだ。
そして、そんな風に深く語り合える友人が、親友でないとしたら、何が親友に成るのだろう。
鈴とジャンヌは、お互いにそう考え合った。
そして、お互いに自裁する、と言い合った一方で。
「彼は自分の下に必ず還ってくると信じるわ。貴方と話してそう考えた。だから、自裁することはお互いに無いわね」
「私も同じです」
鈴は言い、ジャンヌも言い返し。
共に彼の帰還を待つことにした。
この後、裏エピローグとして、野村雄の彼女達に対する想いを描いて、完結させます。
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