装備単純強化編
今回は装備の単純強化の回です。
読まなくても本編には影響ないよ。
俺達は新装備を持ち寄って、お披露目をしていた。
まずは俺。
俺の新しいガントレットは、フレームにドラゴンの骨、そこへいつもの合金で補強を加えてある。
外装には鱗がびっしり。これがエーテル鋼の代わりだ。鱗そのものが外の魔力に干渉する性質を持っていて、以前に増して、外の魔力に干渉できる感覚がある。
さらに指先にはドラゴンの爪が仕込まれていて、拳を握ると刃がきらりと覗く。殴打に切断が加わり、もはや鉄板でも豆腐みたいに裂けそうだ。
俺のための唯一無二のガントレットだ。
防具は篝に託した。頭、胸、足の三点。
まず頭。兜というより、額から後頭部を覆う半覆いタイプだ。前面は視界を妨げないように開けてあるが、こめかみと後頭部は分厚い鱗板で守られている。角が突き出してるからフルフェイスは無理だが、その分“角そのものを固定する枠”が設けられていて、ぶつけても根元に衝撃が集中しないよう工夫されている。角を活かしたまま護るとか、篝も頭がおかしいくらい真面目だ。
胸当ては鱗を幾重にも重ねたプレート。外からの衝撃は斜めに逸らし、一度受けてから分散させる。叩くと金属より低く響く音が返ってくる。内側には骨材を薄く仕込んであって、衝撃が一点に集中せず全体で受け止める仕掛けだ。いわば“胸骨代替品”ってやつだ。
足は脛当てと靴。靴は頼んでなかったが、興が乗った、とかで作ってくれた。
脛当ては膝から足首まで鱗を組み木みたいに噛み合わせてあり、動きを妨げずに蹴りの衝撃をそのまま伝える。吸収じゃなく“反発利用”。蹴り脚が武器になるように設計されている。
靴は分厚い革の外殻に鱗を貼り合わせたブーツ。かかとには削った骨片が仕込まれ、爪先には小さな鱗板が埋め込まれている。見た目は地味だが、踏み込めば岩を砕けそうだし、蹴り飛ばせば相手のどこかは持っていけそうだ。これなら“蹴り殺す”って表現が冗談じゃなくなる。
全部あわせると重装に見えるが、実際は驚くほど軽い。鱗が金属より軽いおかげで、動きは鈍らず、衝撃にも熱にも強い。
これで頭突きも胸骨折も脛蹴りも安心だ。いや、靴のほうは安心じゃなくて敵がかわいそうなほうだな。
いつも「治せばいい」で済ませてきた俺が、初めて“守る”ためにまとった鎧だ。
「これで骨折ぐらいは減るわね」
アレクトの装備も一新されていた。
胸当ては、俺のよりも薄手に仕上げられている。後衛の動きを邪魔しないためだろうが、鱗を幾重にも重ねた防御力は侮れない。炎や弾丸程度なら正面から受けても貫かれないだろう。彼女が後衛ながらも一人になる場面があることを見越して作られている。支給防具と違い、軽さと柔軟さを優先しつつ“要所は鉄壁”という感じだ。
そして杖。芯材にドラゴンの骨を通し、外装には鱗をはめ込んで補強されている。以前の木製の杖は派手な魔法を放つときしむし折れそうだと言っていたが、これなら殴り倒しても折れそうにない。
後衛のくせに殴るのかって?……アレクトならやりかねない。
余った素材は手足へ。手甲は軽く、細い鱗板を並べただけのシンプルな補強。それでも刃物の直撃を逸らすくらいはできるはずだ。
靴も新調されていた。ブーツの甲に小さな鱗板が埋め込まれ、爪先には削った爪片が仕込まれている。見た目は普通の黒い長靴だが、蹴り飛ばせば近接魔物の顎くらいは砕ける。
後衛の護身用としては過剰気味だが……まぁ、俺のせいで一人で残すこともあるしな。
「……似合ってるな。」
思わず口から出ると、アレクトは少し照れたように胸当てを叩いた。
「でしょ? あなたが無茶して突っ込むんだから、私が最後まで立っていないと!」
そう言って笑った姿は、もう“学生上がりの新人”じゃなかった。
ドラゴン素材に守られた後衛──俺の相棒は、確かに一人前のシーカーになっていた。
ついでに九条の装備だ。
九条の装備は派手じゃない──でも、素材を聞けば背筋が寒くなる。
左腕の小盾は、タラスクの甲羅とギガントの骨を合わせた特注品だ。大きさは前腕に収まる程度なのに、叩けば鐘みたいに低い音が響き、手が痺れる。衝撃を吸収して、斜めに滑らせる。普通なら鎧一式に使うはずの素材を、片腕の盾に贅沢に詰め込んである。九条はそれを軽々と振り回し、笑って「かわいいでしょ?」とか言うけど──いや、可愛らしいのはお前の顔だけだ。盾は洒落にならん。
腰にはフェンリルの剣ナタ。刃は山刀より分厚く、背筋に狼の毛並みみたいな文様が走っている。斬るというより叩き割る。肉も骨も一撃で噛みちぎる獣の顎を、そのまま刃にしたみたいな武器だ。刃こぼれひとつなく、研ぎ澄まされた銀の光が背筋を冷たくする。
「どう?これで、なんでも防いで斬れちゃうよ?」
九条は楽しそうに盾と剣を構える。
「……それ、B級以下が持ったら存在そのものが反則だろ。てか、なんで笑って振り回せんだよ。」
A級シーカーってのは、怪物の遺骸を日用品みたいに使うやつららしい。俺はため息をつきつつ、改めて思った。




