ハンターなら大剣を使いたいよね
「お前にやる大剣はねぇ。」
「大将、そんなタンメ…じゃない、殺生な。」
「何本目やコラ、このド下手クソが!そないポンポコ折れるモンちゃうわ!アホみたいな使い方しよるからやろボケぇ!」
「……焼肉の鉄板にしたのは悪かったよ。やっぱり言わなくても、わかるもんなんかね。……バレてないと思ってたんだけどな。」
「はぁ?鉄板!?そんな使い方までしとったんか!ええ加減にせぇや、ホンマどつき回すぞコラァ!」
俺は今、シーカー専用武器専門店「武器処」に来ている。質はいいが紹介じゃないと売ってくれない店だ。俺は両親のツテがあったから問題なかった。今時、珍しい鍛冶で作る正真正銘の武器を扱っている。店にある物から売ったものまで、他にない一品物だ。俺はここ以上の武器を知らない。
そんな武器をバカバカ叩き折る俺は今、正座して両手を合わせている。
「大将、この通りだ!頼む、もう一度チャンスをくれ!」
そんな俺の様子に怒りが落ち着いたのか、武器処の亭主兼鍛治氏の白島元は言った。
「お前なぁ。……ホンマに何本目やおもてんねん?大剣やで?身体強化系の異能持っとる奴でも、壊そう思て壊れるような作りちゃうで?それをこの2年で何本ぶち折ったおもてんねん。言うてみ?」
「……4本目からかぞえてねぇです。」
「お前はほんまに……7本やぞ……今日ので8本目や。ええ加減にしぃや、オマエに剣の才なんか元からあらへんねん。ただアホみたいな馬鹿力で振り回しとるだけや。なんでまた大剣にこだわんねん?」
「……ロマンです。」
「ロマンで飯がくえ……オマエはホンマに食えとったな。……せやけどな、ええ加減ちゃんと扱える武器持てっちゅうこっちゃ。」
白島は、しわが深く刻まれた赤ら顔に真剣な色を見せる。
「星和ワシはな、30年くらいここで武器屋やっとる。そないしとったらな、ある日、ふっと帰ってこんやつもよおさん見てきた。お前のオトンもそうやったやろ。別に意地悪で売らん言うとるわけちゃうで?心配して言うとんやで?武器はシーカーの命綱や。ロマンなんかで命落とさんとってくれ。」
名前を呼ばれたのは初めてかもしれない。
ここまでは言われたら俺だって従うしかない。
まぁ度々壊しては素手での殴り合いになってたからそりゃそうか。
モンスターなハンターのゲームに憧れて大剣で戦ってきたのは一生言えないな。
俺は身体を起こしておやっさんに向き直る。
「ごめん、大将。……それで、俺はどうしたらいい?」
「まず刀剣の類はアカン。大剣折れるやつの力に耐えられるもんやあらへん。槍みたいな長物もやめとけ。どうせ間合いに入られて、振り回して壊すんがオチやろ。ほんまは重量ある武器が一番合うんやけどな……そういうのは柄も長う出来とるし……鉄塊で殴った方がまだマシちゃうか。」
「……大将、じゃあもう武器は持つなって事か?何にも解決してねぇ気がするけど。」
「アホ、誰が武器持つな言うた。……ええから、ちょっとこれ見てみぃ。」
そう言っておやっさんが出してきたのは、鈍色のガントレットだった。
「これはなまだ試作や。アダマンタイトとミスリルの合金や。硬うて軽うなる思てんけど、魔力通したら重うなる金属が出来てもてな。ガントレットに仕立てたんやけど……まぁ最初っからクソ重い。せやけどオマエなら最大まで重うなっても扱えるやろ。殴る蹴るの才は一級品やからな。」
アダマンタイトは非常に固い金属で、魔力を吸って重くなる金属で、ミスリルは軽いし加工しやすい、魔力をよく通す金属だ。
……コレ、昨日今日作ったもんじゃないな。ずっと前から用意してたんじゃねぇのか?
「大将、『武器しか作らへん』って言ってたじゃないか。いいのか?」
「これだって武器やないか。殴る武器や!」
そんな屁理屈をこねて自分の教示を曲げるほど、俺が心配だったんだなと感じる。ありがたい話だ。
「……それはそうと大将は武器を粗末にするなとか、剣で焼肉なんか職人への冒涜だとか言わねぇよな?なんでた?」
「武器はいずれ壊れるからや。どんだけ大事に使っても壊れるときは壊れる。それに売った後にどない使ってもわしには関係あらへん。そうやないと、人殺した武器を作ったやつまで捕まらなあかんなってまう。」
「……さっき焼肉のプレートにしたって言ったら怒ったぞ。」
「さっき怒ったんは予想外やったんと、それで劣化してお前が怪我したらと思ったからや。二度とすんなよ。」
「もうしないさ。というかガントレットじゃ無理だろ。」
「それもそうやな。」
こうして新たな装備を手に入れた俺は、ちょうど入ってきた緊急出撃要請に喜び勇んで参加した。
休日?知るかよ。新しいオモチャもらったんだ、そりゃあ飛び出すに決まってんだろ!




