第七話 祭り
帰り道、河川敷を歩いているとある屋台が見えてきた。
「ねぇ、あれ、なんかお祭りでもやっているんじゃない。」
「ああ、そういえばやるって言っていたよね。」
「私たちも寄っていかない?」
「そうねぇ、まぁ、時間もあるしいいんじゃない。」
わたしたちは並んで、そこへ向かう。
お互いに欲しいものを買いに行く。
わたしは綿菓子を買った。
それをちぎって一つずつ口へと運ぶ。
みんなは何を買ったのだろうか。
みんなとの集合場所へ向かうその途中でお面も買った。
集合場所へ行くと先に楓と千夏が待っていた。
「おーい、二人とも待たせてごめーん。」
「いやいや、待ってないよ。」
「そうだよ~。大丈夫。」
「二人は何を買ったの?」
二人の手元を見てみる。
「私は、焼きそばね。けっこうお腹すいていたのよ。だから、がっつりしたもの頼んじゃった。」
「私はいちご飴を買ったよ。ちょっと女の子っぽ過ぎるかな?」
「いやいやそんなことないよ。わたしもいちごあめ好きだし。あーあ、わたしもそうすればよかったな。」
「そんなに好きだったのかい。何なら一つあげるよ。」
「本当に?ありがとう。」
千夏からいちご飴を一つもらう。
もらった雨を堪能していると、奥から、桃ちゃんと純花が手を振ってこちらに歩いてくる。
「あっくーん、楓、千夏。ただいまー。」
「ごめんなさいね。待たせてしまったかしら。」
「いやいやそんなことないよ。わたしたちもさっき合流したばかりだから。ちなみに二人は何を買いに行っていたの。」
「ええ、私たちは二人でかき氷を買いに行っていたのよ。ただ、そこのかき氷屋さんがすごく混んでいてね。」
「もお、すごく待ったんだからぁ。」
「それは大変だったね。」
「あっくん、全然そう思ってないでしょ。」
「アハハ、ごめんごめん。」
近くの神社の境内の近くが空いているのを見つけたわたしたちはそこに座ってそれぞれ買って来たものを食べる。
そのうち日も暮れあたりも暗くなり、夜桜がスポットライトに照らされ、美しく輝いている、
「あーあ、これじゃあ学校の桜も来週の始業式には散っちゃっているかもなぁ。」
「そうだね、今日お花見ができて本当によかったよ。」
「もう来年には一緒にできないかもしれないわね。」
「ちょっとぉ、純花、なんでそんなこと言うのぉ。高校卒業しても一緒に集まろうよう。またこうやってお花見に来ようよ。」
「大丈夫だよ、桃ちゃん、こういう時の純花はただの照れ隠しだから。昔からそうなんだから。ねぇ、純花?」
「っ、し、知らないわよ。」
純花の顔が急に赤くなる。顔に手を当てる純花。とびっきりの笑顔になる桃ちゃん。相変わらずニヤニヤしている楓と千夏。本当にいつも通りのメンバーだった。この時間がずっと続けばと心の中で口にする。
「ねぇ、また河川敷の桜を見に行こう。」
「そうだね、帰り道もそっち方向だしそうしようか。異論はないよね。」
「ええ、全然問題ないわ。」
桃ちゃんと楓の返事が返ってこない。
後ろを振り返るとそこに二人の姿はなく、少し離れたところにごみを捨てに行っていた。
「あ、私たちもごみ捨ててこないと。」
「そういえば、そうだね。」
わたしたちは二人の後を追ってゴミ箱にごみを捨てに行く。
「あら、あなたたちもごみを捨てに来たの?てっきり帰る気満々だったからもう捨てたものだと思っていたわ。」
「あはは、わたしたちも捨てることにさっき気が付いたんだよね。」
「そうだ、帰ることで一つ。帰り際に桜並木の下をもう一度歩いていこうって飛鳥君としゃべっていてね。」
「そうだったの⁉いいねいいね、行こう行こう。」
先走る桃ちゃんの背に続く四人。
上向きのスポットライトは道を照らすことはなく、頭上の桜に向けられた注意は自ずと足元の不注意へと変わる。
わたしはサクラの根が起こしたアスファルトの亀裂に足を引っかけてしまった。
「全く、気を着けなさいよね。危なっかしいんだから。」
宙を裂くわたしの腕を純花が支えてくれる。
「ご、ごめん。ありがとう。」
純花に支えられ何とか起き上がる。
「だ、大丈夫?怪我とかしてない?」
「してないよ、大丈夫。」
恥ずかしいところを見せてしまった。
帰り道の桜は昼間に見たものとはまた違った輝きを放っていた。