第三話 学校でⅡ
そう言って待つこと五分ほどたった時、また、廊下を走る音が、今度は複数聞こえてきた。
多分、純花たちだろうと、騒がしいなと、思いながら席について考えていると、教室の扉をガラガラと開ける音が聞こえた。
「いやー、お待たせ飛鳥。最後の一人がなかなか捕まらなくてさ」
捕まらないって動物か何かなのだろうか?
「いや、言うほど待ってないぞ。で、そっちが言っていた友達か?」
「はーい、桃ちゃんだよ。よろしくね、あっくん」
純花の後ろから現れた女の子は、そう声をかけてきた。
ものすごくなれなれしいんだけど。
「あーもう、桃ちゃん、ちゃんと自己紹介ぐらいして」
「はいはい、ごめんね、改めまして篠原桃だよ、よろしく。ほら二人も続いてよ、恥ずかしいじゃん」
「あーうん、私は九条千夏。よろしね…えっと何て呼べばいいのかな」
ずいぶん丁寧に挨拶してくれるな、この子。
「なんでもいいよ、九条さん」
「そうじゃあ、飛鳥君で。私もなんて呼んでもらってもいいから」
「わかったよ」
九条さんか、美形でおしとやかって感じのきれいな人だな。
そう心の中でつぶやくと純花の視線が飛んでくる
「それじゃあ、うちが最後だね。うちは姫野楓、よろしくね」
「うん、よろしく姫野さん」
こっちは元気系の姉御って感じだな。
「えーなんか距離なあい?あっくん」
「初対面なんだから仕方ないだろ。さっきも気になったんだけど、そのあっくんって何?」
「え、あだ名だよ、飛鳥君の」
「お、おう」
「いや、もう、女の子なんだからあっちゃんじゃない?あえて言うなら」
「いや、あんたらも飛鳥君って言ってたやん」
それは本当にその通りだと思う。
「そうでした」
こんな感じで距離感が少しバグっていたが、彼女たちとそのあと一時間ほど話した。
みんないい人ぽかったのでよかった。
これからも仲良くしていけそうだ。
ただ、みんなにくっつかれていた時、純花の目線がすごく怖かったのを覚えている。
いまだに思い出してみても背筋がブルっとする。
「今日のあんた、楽しそうだったわね」
純花が急にそんなことを言ってきた。
「そうか?」
「そうよ、女の子相手に鼻の下伸ばしちゃってさ。まったくよ、まったく」
「その友達を紹介したのは純花だろ」
「そうだけどぉ」
純花はいまだ不満そうだ。
何がそんなに嫌だったんだろうか。
まったくわからないがとりあえず、今はそっとしておいたほうがいいのかもしれない。機嫌の悪い純花に変なことをしてしまうと余計に大変なことが起こるのは、以前経験したのでわかっている。
「なぁ、この後どっかよっていかないか?スイーツ一つくらいなら奢ってやるぞ」
「アイスがいい」
純花の返事は小さかった。
が、返事自体はすぐに帰ってきたので、寄り道には賛成のようだ。
「じゃあ、行こうぜ」
「うん」
そんな感じで、コンビニによる。
今日は夏ぐらい暑かったので冷房の効いたコンビニはとても心地が良かった。
「純花は何味にするんだ」
「ブドウ味かな」
「そっか。俺は、みかんにしようかな」
自分の分と純花の分の二つをレジまでもっていく。
純花の分まで俺が持っているのに、純花は俺の後ろにぴったりとついてくる。
「外で待っていてもいいんだぞ」
「暑いからやだ」
そんなことを言って離れてくれない。
まぁ問題はないし、いいのだろうか。
アイスを買って外に出る。
「やっぱ、暑い中で食うアイスはおいしいな」
「ええ、こっちのブドウもおいしいわ。そっちのみかんもおいしいの?」
「ああ、食うか?」
「ええ、ちょうだい。私のも食べていいから」
そんな風に俺たちは楽しみながらアイスをいただいた。
やっぱり、暑い中のアイスは最高だぜ。
アイスを食べた後、俺たちは一度それぞれの家に帰ってから、着替えた後に俺は純花の部屋に行った。
「なぁ、今日の夕飯は何~」
「いやさっき、アイス食べたばっかでしょ。もうちょっと後でいいでしょ」
「はーい、じゃあまた映画でも見ようぜ」
「そうね、あの去年やっていたアニメ映画にしましょ」
自分が思っていたよりもお腹が膨れていたのか、およそ中盤頃になるとうとうとしてしまい、次に意識を覚ましたのはラストシーンが終わってからだった。
純花も寝てしまったのか、俺たちはお互いに肩に寄りかかりながら寝てしまっていた。
「っ、ごめんなさい寝てしまっていたわ」
「いや俺も寝ちゃっていたから。でも、このひざ掛けどこから来たんだ」
「あんたが寝たとき、私が掛けてあげたのよ」
「そうだったのか、ありがとう、純花」
純花は起き上がると、台所へ向かった。
ご飯の用意をしてくれるんだろう。
「今日は何がいい?」
「なんでもいい。」
「はぁ、じゃあこっちで作るわよ」
「はーいよー」
そのあとは純花の作ってくれたご飯を一緒に食べて、その日は終わった。