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神様の気まぐれ  作者: 四季織姫
海染飛鳥の予想外
20/21

第二十話 卒業式

 クリスマス、恋人たちの聖夜にわたしたちはまたみんなで集まることになった。

 今日は千夏の家に集まることになった。

「今日はゆっくりしていってや。ただ、弟もいるんやけどごめんやけど混ぜてもらってもいいか?」

 クリスマスということなどでわたしたちはクリスマスケーキを買ってから、千夏の家に向かう。

 千夏は楓と一緒にチキンなどの料理を用意するらしい。

 千夏の家に着くと、弟君がお出迎えをしてくれた。

 廊下を抜けて部屋に行くともうすでに桃ちゃんもおり、料理も完成していた。

「ごめんね。遅くなっちゃったかな?」

「いや、料理もさっきできたところだから大丈夫や。」

 それから、みんなで料理を食べて、ケーキを切り分ける。

 みんなでケーキを食べるのは久しぶりだったが、千夏の弟君がそれはもう目をキラキラさせて食べているので、それがもううれしくてうれしくて感動のあまり泣いちゃいそうだった。

 ご飯を食べ終わった後、あみだくじでプレゼント交換会を開催することになった。

 千夏の弟君を含めた六人でプレゼントを交換し合った。

 それから、みんなでゲームをしたりして楽しい時間を過ごすことになった。

 散々遊んだ後、楽しいクリスマス会もついにお開きとなった。

 弟君はまだ遊びたそうにしていたが、千夏が何とか納得させていた。

 すでに眠そうだったし、すぐに寝ちゃうことだろう。

 千夏の家から出て、帰ろうと思った時、桃ちゃんが口を開いた。

「あれ、楓は一緒に帰らないの?」

「え、ああ、楓にはわたしから用事を頼んだんだ。だから残ってもらうことにした。」

 その時、隣で、純花が「そういうことか」と声にするので、それでなんとなく私も察することができた。

「なんでなんで?」と聞き続ける桃ちゃんと引っ張って帰る。

 桃ちゃんとは途中で分かれて、わたしたちは近くの公園による。

「なんでここに寄ったの?」

 純花が聞いてくる。

「だって、さっきのプレゼント交換じゃ純花とプレゼント交換できなかったからさ、実はもう一個プレゼント用意していたんだよね。」

「それは奇遇ね。私も持ってきていたのよ。」

「それじゃ、一緒に出そうよ。せーの、」

 二人して一緒にプレゼントを公開する。

 純花の手元にはマフラーがあった。

「ごめん、あんたみたいに手編みとかはできなかったんだけど。」

「そんなのどうでもいいよ、ありがとう純花。」

「で、飛鳥のはオルゴール?」

「そうそう、なかなかおしゃれでしょう。」

 そんなこんなで、二人だけの小さなプレゼント交換会に幕が下りた。

 もう一度、家に向かって歩き出す。

 帰り道には、雪がぽつぽつと降り始めた。


「文化祭あれから、もう何か月たったんだ?」

 千夏がカフェでパフェを食べながら、そう言う。

「なあに、急にもう明日わたしたち卒業だよ。」

「本当に時間が経ったよなぁ。なんたって、飛鳥と純花がそんなにもイチャイチャできるようになったぐらいだもんな。」

 なんでそう言われるかというと、今わたしの隣では純花が座っていて、わたしの腕を抱きかかえているからだろう。

 大きいパフェとコーヒーを片手で食べるのはずいぶん器用なことをするなぁとは思うのだが。

「もう、明日卒業式だよ。びっくりだよねぇ。」

「桃ちゃん、それ、さっき飛鳥が言っていたわよ。」

 相変わらず、楓が桃ちゃんを諭している。

「本当に今年はいろいろあったよねぇ。」

「去年もいろいろあったけどね。」

「なんかあったっけ?」

「何って、ほら飛鳥が女になったでしょ。。」

「あ……そうだったわ。忘れてた。」

「忘れてたって飛鳥かわいそう。」

「アハハ、まぁいいよ。」

 みんなとはこの二年間いろいろあったけど、みんなのおかげで乗り越えることができたので本当に感謝している。

「飛鳥―、何いい話風な顔をしているの?卒業はこれからだぞー」

「でも、本当に早いわよね。みんな、希望の進路に進めたし。」

「文化祭終わってからの時間は大変だった。私はもっと楓とイチャイチャしたかったのに―。」

「それが一番意外だったよね。てっきり、千夏は楓のことはいい友達だと思っていると思っていたんだけど。」

「そんなことないよ。楓のことは大好きだよ。でも、大学入試の勉強があって、全然時間取れなかったんだもん。」

 確かにふたりは、というか千夏はすごくラブラブに見える。

「付き合ってみて気が付いたけど、千夏は甘えんぼさんだったのよ。一緒にお風呂に入ったときとかぁ。」

「ちょちょ、ちょっと待って。」

 あー、一緒にお風呂、入ったんだぁ。

 全員で生温かい視線を千夏に送る。

 純花と千夏のパフェもだんだん残りも減ってきた。

「みんなは卒業後どうするんだっけ?わたしは専門学校行くけど。」

「さっきも言ったけど私たちは大学へ行くわよ。そのために頑張ったんだもの。」

「桃ちゃんも大学だったよね。」

 そこで千夏が桃ちゃんに話を振る。

「桃ちゃんはね、体育大学へ行くことにしたよ。」

「千夏たちは何を勉強しに行くの?」

「私は文学かな。」

「私は映像編集とか勉強しに行こうと思っているわ。逆に二人はなんの専門学校行くことにしたの?」

 楓がコーヒーを飲む手を止めて、こちらに聞いてくる。

「わたし?わたしは服飾の学校に行くよ。」

「私は料理を勉強しに行くわ。なんたって、うちには大飯喰らいのグルメがいらっしゃるからね。美味しい料理食べさせたいし。」

「あはは、分かるかも。飛鳥の食欲とんでもないよね。」

 二人のパフェがなくなったのを機にカフェを後にした。


 カフェを外に出ると春のほんのり温かい風が吹き抜けた。

「これからどうする?カラオケ行く?ボウリング行く?どうする?」

「桃ちゃん、明日も打ち上げ行くんでしょ。」

「それとこれとは関係ないよ。」

「まぁ、せっかく集まったんだから。遊ばなきゃ損だよ。それに打ち上げは確かご飯食べに行くんでしょ。遊びに行くのとは別だよ。」

 桃ちゃんはルンルンで、スキップなんかをしている。

「それなら、全部行こう。」

「全部かぁ、お金足りるかなぁ。」

「まあまあ、行こう行こう。」

 そのあとはカラオケ行ってアニソン歌いまくって、ボウリングで桃ちゃんやまさかの純花がストライクを連発して、みんなで夕飯を食べに行って、ゲーセンで音ゲーやクレーンゲームでお金を溶かすことになった。


「いやぁ、遊んだ遊んだ。それにみんなも荷物いっぱいになったな。」

 全員の手にはパンパンになった袋を片手、両手に持っている。

「まさか、こんなにも遊びつくすとは。」

「まぁ、楽しかったわね。」

「飛鳥はファミレスでの出費が一番多かったんじゃない?」

「そ、そんなことないよ。さすがに他の方に使ったよ。もうお財布すっからかんだよ。」

「明日の分は残っているの?」

「それは残ってる。」

 横から、電車の光がやってくる。

「それじゃあ、帰ろっか?」


 そして、翌日、とうとう卒業式になった。

 全員がビシッと制服を着て、胸元に小さなコサージュをつけて卒業式に臨む。

 一人ずつ名前が呼ばれる。

 しっかり声が出るように意識をはっきりさせる。

 三百人以上の卒業生が全員立たされる。

 それから、校長先生が前で何かを話し始める。

 何度も立ったり座ったりを繰り返され、腰がだんだん痛くなる。

 そうすると、二時間ほどで卒業式が終わった。

 それから、クラスのみんなで写真を撮ったりしていると、歌川先生が話し始める。

「いいか、お前ら、これから飯食いに行くからな、ここでは軽く話しておこうと思う。いい話するから、ちゃんと聞けよ。お前らはこれからいろんな道に行くことになると思う。それはいつだって折り曲げていいからな。そして、今こうやってお互いに大事にしているみたいに、行く先で交わったやつらのことを大事にしろ、それはいつかきっとお前たちに返ってくる。以上だ。あとは、今夜最高に楽しもうじゃないか。」

 先生の言葉にわたしたちはたった一言、「ありがとうございました。」と伝える。

 その夜、わたしたちはクラスメイトの一人の知り合いの人がやっている居酒屋に打ち上げに来ていた。

 そこではびっくりしたことにすでに何人かの髪がカラフルになっていた。

 歌川先生もそれには驚いており、

「お前ら、卒業したとはいえ、行動が速すぎだろう。俺もいるんだぞ。」

 なんて言っていた。

 その夜はどんちゃん騒ぎとなり、みんなでご飯を食べて、先生はお酒を飲んで、食後にはゲームやカラオケをして、騒ぎまくった。

 わたしは人の三倍近くの量のご飯を食べており、クラスの何人かはそれに大笑いをし、もう何人かはビビっている。

 カラオケでは、千夏が十八番で九十八点をだし、クラス中を脅かせていた。

 何人かはカラオケ大会に出ればなんて言っていた。

 純花は途中で疲れて寝てしまって、わたしの膝の上で寝てしまった。

 それを見たクラスメイトの何人かはわたしたちの関係を察したのだろう、今年で何度目だろうか生暖かい視線を送ってくるだけで、何位も言ってこない。

 まぁ、ニヤニヤはしていたが。

 夜も更けてきて、今日はお開きになることになった。

 歌川先生は、「気ぃ付けて帰れよ。」なんて、フラフラになりながら言っていたが、一番気を付けるべきはたぶん先生だろう。

 ある一部は自転車で、残りは大体電車で帰ることになり、さすがに純花を起こすことにしたが、純花は全然起きることはない。

 仕方ないので、おぶって帰ることになった。

 みんなに分かれて、家に着いた。

 純花の家に入って純花の部屋に入る。

 純花をベッドに下す。

「はぁ、こういう時、一緒に住んでいたら、最後まで一緒にいてあげられるんだけどな。」

 そう言って、一件純花にメールを送り、部屋を出る。

 自分の家に戻って風呂の準備をして、今日一日を終わらせる。


 ある春の一日、今は純花の引っ越し準備をしている。

 引っ越しといってもただ隣に荷物を移動するだけだが、つまり、今日から一緒に住むということになる。

「そもそも、なんで一緒に住むことになったんだっけ?」

「え~、忘れたの。もう。」

「ごめん、なさい。忘れてました。」

「は~、まったく。きっかけって言ったら、卒業式の日の夜に飛鳥が一緒に住んだ方が楽みたいなことを言っていたんじゃない。」

「あ、あれ聞いていたの?」

「うろ覚えだけどね。でも、まぁかわいいこと言ってたわよね。かわいいかわいい。」

「うるさい。恥ずかしいからやめてよ。」

 そんな風にしゃべりながら、棚の荷物をダンボールにしまっていく。

 ただ隣に移動するだけなので、簡単に済むかと思いきや、タンスや棚を移動したり撤去したりするために、その中にあるものはいったん退けなくてはいけないらしく、片づけをする必要があった。

 ただ一日で終わる量ではないので、いったん切り上げて、純花に昼食を作ってもらう。

 純花の後姿を眺めていると、無性にキスがしたくなり、純花の後ろまで行く。

「どうしたの?ご飯ならまだだよ。」

 そう言って、降り返った瞬間に純花にキスをする。

「どう?新婚さんぽいでしょ?」

「もう、料理中は危ないでしょ。」

「ごめんなさーい。」

 いまだに、わたしたちはキス一つでお互いに顔が真っ赤になる。

 ただこれでいいのだ。

 わたしたちはわたしたちのスピードで一歩一歩進んでいくのだから。


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