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神様の気まぐれ  作者: 四季織姫
海染飛鳥の予想外
18/21

第十八話 文化祭

 朝方、腰に痛みを感じ、目を覚ました。

 なぜかというと教室なんかにお布団はないわけで、全員壁にもたれて寝るか、床に寝そべるかして寝ることになったからだ。

 周りを見れば、楓と千夏が寄り添いあって眠っている。

 なんだ、楓も結構やるじゃん、と心の中で思う。

 少し日差しを浴びようと外へ出る。

 するとそこにはすでに先客がいた。

 横顔を見れば、それは純花であった。

「純花も、腰が痛くて起きちゃった感じ。」

「いえ、ただ目が覚めただけだけど。というか、あなたそんなおじさんみたいな起き方したの?」

「おじさんみたいって言うな。まぁいいや。自販機で飲み物買おうと思っていたんだけど純花もいる?」

「そういえば、確かにのどが渇いたわね。買ってくれるの?」

「まぁ、純花には普段からお世話になっているし、飲み物くらいならいいよ。」

「じゃあ、コーラが飲みたいわ。」

「朝からコーラってきつくない?」

「何言ってるの、あの刺激がいいんじゃない。目が覚めるのよ。」

「純花って本当に炭酸が好きだよね。」

「ええ、美味しいもの。」

 しゃべりながら歩いていると、自販機に着いた。

「じゃあ、純花はコーラね。私は何にしようかな。」

「いつも通り。紅茶でいいんじゃない。」

「そうだね。でも、今日はフルーツティーにしようかな。」

 せっかくの純花の提案だったが、今日は少し趣向を変えてみようと思う。

 教室に戻ると、もうすでに全員起きて、身支度をこなしていた。

 寝ぐせ直しなどを済ませたら、男子の方へ連絡をする。

 それから、しばらくして男子たちがやってくる。

「男子たちどうなってんのさ。時間あったでしょ。なんでそんなに髪の毛がぼさぼさなのさ。」

 男子たちの斬新なヘアーアートを見て、女性陣が大爆笑となっている。

 散々笑った後、わたしたちは作業に入った。

 みんなで泊まり込みで行った準備は順調に進んだ。

 そして残すは本番当日だけとなった。


 待ちに待った文化祭。

 ついにこの日が来た。

 今日やってきたとき、まずわたしはきらびやかに彩られた正門の前のアーチに目が行った。

 なんともまぁ大きい門だこと。

 大量のポンポンをつけられて、文化祭の名を書かれている。

 そんな風に大きなアーチを見ていたら、隣にいたはずの純花がスタスタと校舎の方へ歩き出してしまってるではないか。

 わたしもすぐにそのあとを追いかける。

「ちょっと待ってよ。純花。」

「待てないわよ。まだまだこれからなのよ。私たちの準備は完全には終わっていないのだから少しでも速く教室に向かうべきよ。」

 純花がいつもより厳しい。

 多分純花も緊張しているのだろう。

「わかっているから、純花、そんなに緊張しなくていいよ。大丈夫、わたしたちはもう十分練習をしてきたじゃないか。」

「うん、わかってる。大丈夫だから。」

 そう言って今度は二人並んで教室の方へ足を向ける。


 教室に入るとすでにやってきていたクラスメイト達が準備に取り掛かっている。

 机、椅子の位置の確認。

 店員として着る衣装の確認。

 料理や飲み物、その材料の確認。

 全員がバタバタと足音を立てて、かつ、走らないように慎重に歩いている。

「あ、飛鳥たち。やっと来たんだね。もう、店員組はすでに着替えに行ったよ。二人も行っておいで。」

 そう言って、わたしたちの背中を押してくる友達。

 わたしたちは渡された浴衣をもって、更衣室の方へ向かった。


 更衣室ではもうすでに浴衣や袴に着替え終わっている子たちがいて、まだ終わっていないこの帯締めなどを手伝っている。

 わたしたちもすぐに着替えを始める。

 とはいっても、わたしは浴衣の着方がわからないので、周りの友達に頼んで着付けてもらう。

 純花は純花のお母さんができるので、自分の着付けをやってしまう。

 うわぁーん、わたしのもやってほしいなぁ。

 でも、多分、あんなに近づかれたらわたしどうにかなってしまうと思うなぁ。

 すると、帯の位置調整のために背中に居た友達が「よし、オッケー。」と言って、背中をたたいてくる。

 後から、来た子たちの準備も終了し、わたしたちは自分たちの教室に戻ることになる。

 わたしたちが更衣室のドアを開けると、同じタイミングで男子たちの更衣室のドアも開いた。

「なんだ、女子たちも着替え終わったのか。」

「ていうか、隣、男子だったの?覗いたりしてないでしょうね。」

「声も聞こえないくらい分厚い壁なのにどうやって覗くんだよ。」

「それもそうね。」

「じゃあ、疑いも晴れたし。凱旋と行こうじゃないか。」

「その、言葉選びいいね。まぁ、わたしたちが来たってこと知らしめてやりましょうか。」

 わたしたち、二十人くらいの生徒が和服を着て歩いていると、それだけで雰囲気が華やかになり周りからの注意を引く。

 客寄せパンダとしては、かなりの効果があるようだ。

 教室に戻るまでの間、多くの生徒たちの目を引くこととなった。

 教室に戻ると、千夏や楓や委員長たちがクラスTシャツを着て、開店前の最終準備に取り掛かっていた。

「みんな、何か手伝うことはある?」

「和服組は黙って座ってて、着崩れでもしたら大変だからね。」

「わかった、頑張ってね。」

 わたしたちはそれぞれ、お客様用の席に座って準備の完了を待っている。

 そもそも、開店は十二時からなのだ。

 それまでは全然時間には余裕がある。

 それから、三十分も経たないうちに準備は終了し、すでにみんなそれぞれ席に着き、わずかながらの休憩をはさんでいる。

 みんなで昼食を食べ、いざ、文化祭が始まろうとしている。


 文化祭の始まりの放送が鳴り、校長先生らのあいさつが終了し、開始の合図が鳴った瞬間、わたしたちのクラスは学生たちで埋め尽くされていた。

「飛鳥、三番テーブルの対応にまわって。」

「わかった、じゃあ、そっちはちゃんと引き継いでね。」

「大丈夫だから。行ってきて。」

「はーい、いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」

 わたしたちの店は大繁盛といっていいだろう。

 ただ、ここに居るのはすべて学生なので、外部参加の人もお客として来てくれたらいいのだけど。

 ちなみにこのお店の最高戦力は純花であった。

 純花はどんどん注文を捌いていく。

 注文ミスもないし、運ぶ途中で人にぶつかることもない。

 完璧な店員さんなのである。

 しかも、さらにすごいのはそのうえで調理班も兼業しているのである。

 ランチタイムが終わり、デザートタイムに差し掛かったころ、客層がだんだんと変わってきた。

 今まで学生だけだったのが、私服の外部の方が増えてきたのだった。

 時間が経つとともにどんどん後者の方が増えてきた。

 そんな感じでわたしたちの文化祭一日目は終了を迎えた。


「はーい、みんなお疲れさま。今日、シフトに入ってくれていた人は本当にありがとうね。明日はゆっくり文化祭を楽しんでね。今日シフトに入ってなかった人は明日頑張ってね。」

「「「「はーい」」」」

 わたしは純花たちの方へ向かう。

「は~、本当に疲れた。」

「飛鳥、お疲れさま。お茶いる?」

「ありがとう。」

 そう言って、純花からお茶を受け取る。

「もう、最近はこんなことでは驚かなくなったな。」

 そう、千夏が言う。

「え、何のこと?」

「いやだって、それ、純花が口付けたやつでしょ。相変わらず、そういうこと簡単にできちゃうよな、二人とも。」

「まぁ、今更でしょ。」

「ま、そんなことは置いといて、みんな今日はお疲れさま。」

「ええ、みんな本当に頑張っていたわね。」

「いや、純花が一番頑張っていたでしょ。」

「そうねぇ、飛鳥も頑張っていたって聞いたわよ。」

「ありがとう、でも、千夏や楓や桃ちゃん、みんなも調理班として頑張っていたって委員長が言っていたよ。」

「いやー、私は楓に助けてもらってばっかりだったよ。ありがとうね、楓。」

「ふぇ、い、いや、いいのよ。大丈夫だから。」

 突然の千夏の感謝に楓がたじたじになってしまう。

 ああ、女の子のああいう仕草って本当に可愛いな。

 すると、純花が小声で話しかけてくる。

「ねえ、もしかして、楓って千夏のことが好きなの?」

「そうらしいよ。よくわかったね。わたしにはわからなかったのに。」

「そりゃ、飛鳥は鈍感だからね。」

 純花はわたしとは違って鋭いらしい。

 まあ、確かにそうだろうなって思ったことはちょくちょくあったけれど、まさか本人から直接言われてしまうとグサッと来る。

 心にくる言葉を言われたので。桃ちゃんに泣きつくことにする。

「桃ちゃーん、純花がイジメてくるよぉ。」

「あっくん、大変だったねぇ。よーしよし。」

「桃ちゃん、飛鳥のこと甘やかさないで。すぐ調子乗るんだから。」

「ほらー、純花が冷たいんだよ。」

「事実を言っているだけよ。」

 こんな感じに永遠としゃべり続けていると、わたしたちの声をかき消すほどのチャイムが鳴る。

 全員フラフラになりながら、帰路を辿る。

 互いが互いを支えあって、電車に乗った。


 翌日、今日はゆっくりみんなで文化祭を回ることができるので、楽しみつくそうと思っている。

 とはいえ、今日も着物は着なければいけないようで―というか、私も着たかった―更衣室へ向かった。

 今日は思い切って、純花に着付けを頼んでみた。

「純花、お願い。」

「いいよ。」

 純花の顔がわたしのお腹に近づいてくる。

 なんかいい香りがして、どうにかなりそうである。

 変な気を起こしそうになるので、わたしは目をつむることにする。

「はい、できたわよ。」

 すぐに終わってしまったようだ。

 うれしいような、悲しいような。

「うん、ありがとう。」

 今日は朝から、文化祭が始まるのです。

 先に教室に戻って、千夏たちを待つことにする。

「純花、喉渇いていなぁい?」

「いえ、大丈夫よ。」

 千夏たちがやってきたころ、ちょうどタイミングよく、放送がかかった。

「これより、文化祭を始めます。」

 その一言が響き渡った後、それに続いて歓声が起こった。


 文化祭が始まり、わたしと千夏は千夏たちに手を引かれて、各クラスの出し物を回っている。

 まずはお化け屋敷に行くことになった。

 純花はお化けが怖いので、ずっと私の手をつないでいて、目はつむったままだった。

 わたしはというと、お化けよりもつないだ手にドキドキしてしまって、催しに全然目が行かなかった。

 純花を連れて進んでいる時、最初は音や冷気での驚かしだったのだが、途中、人が襲い掛かってきた瞬間、驚いた純花にわたしを押し倒してきて、わたしは純花を抱えたままこけてしまった。

 顔が近い、顔が近いよ。

 なんて考えながら純花を抱きかかえながら、自分は立ち上がる。

 何やら、お化けたちから生暖かい視線を感じる。

 気まずいので純花の手を引き、そそくさと出ていく。


「あ、やっと出てきたよぉ。」

 最初に声をあげたのは桃ちゃんだった。

「ずいぶんと長居していたね。なんかあったの?」

「いや、純花がお化け役の人にビビって二人してこけちゃって。」

「純花はそんなに怖いのが無理だったのか。それならやめとけばよかったな。」

「それはそれで気に病んじゃうからこれでよかったんだよ。」

 純花は未だわたしの腕にしがみついている。

 わたしたちは新しい出店を回るために歩き出す。

 そのあと、三つくらいまわり、さすがにお腹がすいてきた。


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