私が愛しているのは
「フリア!お前にはもう愛想が尽きた!婚約破棄してくれ!」
その瞬間、私に頭をガツンと殴られたような衝撃が走った。
は?思い出しましたわ。私、悪役令嬢じゃない。
いえ、そんなことよりも、この馬鹿──ゴホン王太子は何を言っているのかしら?愛想が尽きているのはこちらのセリフよ。
何度言っても浮気浮気浮気浮気!浮気王太子なんてこっちから願い下げですわ。
「承りました。婚約破棄しましょう」
「ふんっ。やけに物分かりがいいな。いつもはあんなに口うるさいくせに。いつもそうだったら可愛げがあったものを」
.......ムカつきますわ、彼奴。
なんなんですの?!
まったくこんな奴にあげる可愛げなんてこの世界に存在しませんわ。ないない、論外。
「まあいい、貴様は国外追放だ」
「は?」
何もしてないのですが?なんなんですの?
「お待ちください!」
「待て!!」
「待ってねぇ」
え?──いや、だれ?
三者三様すぎませんこと?
「フリア様、結婚して下さい」
「フリア義姉さま、結婚して!」
「フリアちゃん、結婚しよ〜?」
「「「は?だれ」」」
いやこっちのセリフですわ。だれですの?
「私は騎士団長のクリス・ロバートだ。フリア様は渡しません」
「ぼくは公爵家次男のユリエル・クラシス!義姉さまは渡さないもんっ!」
「オレはー宮廷魔術師のぉ、サミェル・リアでーす。フリアちゃんはーオレのだよぉ?」
ん───。だれかは、だれかと言うことだけは!
わかりましたわね。
「「「で?だれにする?」」」
こっちに振らないでくださいまし!
..というか、
「名前は分かりましたけど、お会いしたこともないですわよね?」
記憶にないですよ。こんな個性豊かな方々。
「...それはっ」
「はーい、ストーップ!」
「っ!ルア?どうしたの?」
「いやぁーお嬢が口説かれてるって言うんで、見物?」
「っ....なによ!見世物じゃないわよ..」
っ期待して、馬鹿みたい。
そもそも、王道(?)の断罪からの求愛も、王道から外れて3人にされてるし、知らない方ですし。望み通りに行くわけがないでしょう。
っほんっと、ばっかみたい。
「まあ、冗談はそこまでにして、っと」
?冗談?
「コクオー様からの伝言ですよー。まずオウタイシー」
「な、なんだ!っ貴様!様をつけろ、様を!」
「あは、確かにー。オウタイシは貴"様"ってつけてくれてるもんねー。いいよーオウタイシ様ー」
お、おちょくってるわ!不敬罪で捕まらないかしら?ハラハラするわ。
「あ、廃嫡ねー。あとー平民へ降格しょぶーん」
「は?う、嘘だ!父上が、そんな、そんなこと!」
「女にうつつを抜かすクソはいらねーってー」
「く、くそ?!口を慎め!貴様ッ」
「平民に慎む必要あるー?」
ハハ、なかなかに辛辣...
その間にもルアは、はい次ー、とすすめていく。
「キシダンチョーはー職務放棄で降格ー平騎士だよー。乙、ワロタ」
「ま、待ってくれ、そんなことッ」
「後はストーキング行為とかもかなー。お嬢の後つけたり、その間職務放棄したりー」
え、怖っ。そんなことあったの?!
「次はーコウシャクケジナーン、ジナンはー当主および次期当主の殺害未遂ー。処刑ってとこをー温情で平民に降格ののち隣国にぶっ飛ばすからー」
「なっ、ぼ、ぼくは!そんなことしてないよぉ」
「えぇーしてるよぉ?まずはーお茶に毒物コンニューでしょー?それからー毒蛇けしかけたりー、馬車に細工とかもしてたよねー。最後にはー堂々と刺客を放ってー。まあ助けてオン売れたからイイけどー」
こっ怖いって。なんでみんなそんなことっ?
「次ーキューテーマジュツシはー、王家の暗殺未遂ねー。呪いとかー禁術とかー。もーアウトだねー。処刑かくてーい」
「やってない!オレはッやっていない!」
「あーしょーじき、一番許せないのがーお嬢に催淫効果のある術かけようとしたでしょ?それかなー」
さいいん?なにそれ、?
「こんなとこかなー。はいじゃー、たいじょーしてねー」
あれ?あ、あっけなく、片付いた?
「ルア、ど、どういう?」
「えー?お嬢ー困ってたでしょー。だからだよー」
「え?!それだけ?」
「んー....じゃーあー。それだけじゃなかったら?」
「へ?」
ルアに手を掬われ、互いの手を絡められる。
「お嬢のことが欲しくてやったって言ったらー?」
「へっ?!」
「だぁいすきだよ?フリア」
「...」
「あは、やだよねぇ」
まって、いま、るあはなんていったかしら?
だいすき?
「へっ?!」
顔がどんどん赤くなる。うれしい。うれしい。
「その反応、少しは期待してもいいのかな?」
「っ!......わたしもルアのこと大好きよ」
あああ!何を言っているのわたし!
もっと他に言い方が!ううぅ〜
「ほんと?」
「...ええ」
「!..そっかぁ。うれしいなぁ。ねぇフリア、結婚しよぉ?」
「あぅ....はい、喜んで」
「やったぁフリアはお嫁さんだねぇ。幸せにするよ、絶対」
「ふふ、わたしだって!これから、末永くよろしくお願いいたしますっ」
随分前に書いたものなので、普段と書き方が違いますが、違和感には目をつぶっていただけると嬉しいです。
従者系が大好物で書いたものになります。
また書きたい。
ご覧いただきありがとうございました。