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無能皇子と黒の聖女  作者: 空北 直也
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81.求婚

 フェリックスの魔力器官を整えると、その魔力は100に増幅していた。


「できたね。魔力が100になった」

「エリアス様!ありがとう御座います」


「それじゃあ、次はリカルドだ」

「え?お兄様、私の光属性魔力も100にできるのですか?」

「やってみないと判らないよ。やってみよう」

「お、お願いいたします!お兄様!」


「エリアス、もしできたら凄いことだな!」

「お父様、これで成功したらお父様も100にしましょう」

「本当か!」

「成功したら、です」


 そして、リカルドとお父様の光属性魔力は100になった。


「簡単にできてしまうのですね。では、次はアドリアナお母様、ガブリエルとレティシアだな」

「え?私も?聖属性魔力が100に?」

「えぇ、聖アニエス病院で活躍していただくためです。ご協力願えますか?」

「勿論、喜んで!」


「あ!もしかしたら、お母様や私の髪と同じ色になってしまうかも知れません」

「構いませんよ!」

「私もです!ガブリエル様と同じ色になるのですよね?!」

「あぁ、良いのですね?それでは」


 そして、アドリアナお母様、ガブリエル、レティシアの聖属性魔力は皆、100になった。

瞳は碧く、髪はシルキーホワイトになった。

「あぁ、レティシア!素敵だ!」

「ガブリエル様と同じになりました!嬉しいです!」

「私もエレノーラ様とサンドリーヌと同じになったのね!」

 皆、嬉しそうで良かった。


「あとは・・・グレースだけだね」

「私?大丈夫でしょうか?」

「お腹の赤ちゃんのことだよね?勿論だよ。それもあるからね。安全にお産をするためにも身体を整えておくと良いと思うよ」


「エリアス様、グレースのことお願いいたします!」

「ふふっ、レオンは本当にグレースのことを愛しているんだね」

「え?それは・・・そうですけど?」

「まぁ!レオンったら」

「また、いちゃいちゃして!」


「そう言うなら、ジュリアも早くお相手を見つけるのね?」

「う。それは・・・」


 そして、グレースの体長を整えつつ、魔力も最大になる様に調整した。それは恐らく、お腹の子も同じ様になったことだろう。


「皆、今、ここに居る人たちは、私の家族の様なものです。少なくとも私は家族だと思っている。だから魔力を整えました。でも他人にはこのことは秘密にしておいて欲しい。解かりますよね?」


「勿論だ。エリアスにこの様なことができると知られてしまえば、力を増幅して欲しいと言い出す貴族が殺到するからな」

「はい。必ず秘密はお守りします」

「皆、これからは外で魔力量の話はしない様に気をつけましょう」

「はい!」


 お父様とお母様が皆に秘密厳守を訴えかけてくれた。そうだな。僕は安易に魔力を増やしてしまったが、これは誰にでもやって良いことではない。今後は気をつけなくては。


「ミシェルは確か100だったよな・・・」

 その時、リカルドは小声でつぶやいてしまった。

「えぇ、リカルド様、私の護衛のミシェルの魔力は100で御座います。増やす必要は御座いません」

「あ、そ、そうだね。レティシア」


「ん?ミシェル?あぁ、バーナードの娘か。確かニコラスと同じで魔力は100なのだったな。それがどうかしたのか?リカルド」

「い、いえ!何でも御座いません!」

「リカルド、何も隠す様なことでもないだろう?」

「お、お兄様!こんなところで!皆、居るのですよ!」


「いや、だから。ここに居るのは皆、家族だって言っているでしょう?隠すことなんてないんだ。そうだよね?レティシア」

「えぇ、エリアス様のおっしゃる通りで御座いますよ。リカルド様」

「うん?なんなのだ?リカルド」


「あーっ!どうしよう!」

「リカルド、どうしたのですか?そんなに赤い顔をして・・・え?まさか、あなた?」

「あーもう!そうです!私はミシェル・バーナードが好きなのです!」


「おぉ!」

 皆が一斉に声を揃えた。

「良く言ったぞ。リカルド」

「お兄様・・・」


「キャーッ!良かった!」

「良かったって、レティシア!あなた、良いのですか?」

 何も知らないアドリアナお母様は、アルフォンソ王の意向はレティシアがリカルドの妻になることだと思っていたのだろう。少しショックかも知れない。


「そうか・・・ニコラスの娘を選ぶか・・・」

 お父様は否定的ではなく、感慨深げにうなずいていた。


「恐れながら、アドリアナ皇妃殿下に申し上げます。わたくしは、ガブリエル様と共にエリアス様の侍従となり、聖アニエス病院で病に苦しむ人々を癒したいと考えております」

「そ、そうなの?陛下、それで良いのでしょうか?」

「うむ。レティシアの想いは崇高なものだ。アルフォンソ王も受け入れざるを得まい。それに親が子の結婚を決めることは、もうできぬのだからな。なぁ、エリアス?」

「お父様、ありがとう御座います」


「あ、ちょ、ちょっと待ってください!今のは私の意向であって、ミシェルが私をどう思っているかは判らないのです!」

「そうでしたね。では、リカルド様、明日にでもミシェルにお気持ちをお伝えいただければと思います」

「え?明日?そ、それは・・・」


「リカルド、もう皆の前で宣言してしまったんだ。レティシアから伝えてもらうなんて駄目でしょう?フェリックスみたいに男らしく!な?」

「あぁ・・・そうですね!わかりました」

「やったわ!」

 レティシアは皆に見えない様に右手で小さくガッツポーズを決めたのだった。


「では、フェリックス様、明日の打ち合わせを!」

「レティシア様、打ち合わせで御座いますか?」

「はい、ミシェルは私の護衛、リカルド様の護衛はフェリックス様です。明日リカルド様とミシェルをふたりきりにする時間を作るのです」

「あぁ、そういうことですね!承知いたしました」


「フェリックス、私の弟のためだ。よろしく頼むよ!」

「はい。エリアス様。私の妹のためでもあるのですね」

「あぁ、そうだった。それじゃ、私とフェリックスは兄弟になるのだね」

「え?エリアス様と私が兄弟?!」


「あぁ、義理の、ね」

「ちょ、ちょっと!まだミシェルが僕を受け入れてくれるって言っていないのですよ?もし、駄目だったら・・・」

「リカルド、そんな弱気になってはいけないよ。あくまでも男らしくね」

「そ、そうでした」

 リカルドは明日のことなのに既に緊張している。まぁ、結果は大丈夫だろうけれど。




 その夜、ベッドの中でアニエスと話した。

「リカルドとミシェルは大丈夫よね?」

「あぁ、間違いなく大丈夫だ」

「こうなると、あとはキースとジュリアだけね」

「うーん。あの二人は急かす訳にはいかないかな?」


「そうね。でもきっと大丈夫でしょう」

「アニエスも解かってきたね」

「私も大人になったのかしら?」

「うん。とっても魅力的な大人の女性だよ」


「それなら、我慢しないで手を出してくれて良いのよ?」

「それは・・・もうちょっと待ってね」

「どうして?」

「心配事が片付いてからにしたいんだ。全て安心できるようになってから」

「わかったわ。今はエリアスを抱きしめて眠れるだけで良いわ」

 そう言ってアニエスは僕を抱きしめた。僕もアニエスを包む様に抱きしめて眠った。




 翌日の放課後、レティシアは作戦行動を開始した。

「ミシェル、私ちょっと寄りたいところがあるのだけど、付き添いを頼めるかしら?」

「承知いたしました。どちらへ行かれるのでしょう?」

「帝都にあるお菓子のお店で新作のケーキが出ているらしいの。見に行って気に入ったら買って帰りたいのよ」

「ケーキですか!是非、参りましょう!」


 二人はお菓子店でケーキを選び、レティシアは4つ買って帰ることにした。

「レティシア様、4つもお召し上がりになるのですか?」

「まぁ!一人で食べる訳ないでしょう?あなたの分も入っているのよ」

「え?私の分ですか!」

「ミシェル、よだれ!」

「あ!って、よだれなんて出ていません!」


「ふふっ!ミシェルって可愛いわね!」

「え?私なんて・・・」

「ううん、可愛いわ。とってもね。さぁ、お城に帰って食べましょう!」

「はい!」


 ミシェルはレティシアを護衛して城まで来た。普段は中に入ることはないのだが、今日はレティシアに誘われているため、レティシアの部屋までついて来た。


 部屋に入ると、部屋付きの使用人が4人掛けのソファのテーブルに4人分の紅茶を用意した。


「ミシェル様、何故、4人分なのですか?」

「コンコン!」

「どうぞ!」

 レティシアがドアのノックに応え招き入れると、そこにはリカルドとフェリックスが立っていた。


「お兄様!それに、リ、リカルド皇子殿下!」

「やぁ、ミシェル。レティシア様にお誘いいただいてね」

「レティシア様!」

「なぁに?ミシェル。そんなに慌てて!ミシェルのお兄様はエリアス様の侍従となって常に城に居るのですから、一度くらいお茶をご一緒に。って思ったの」

「そ、そうですか」

 既にミシェルは真っ赤になっていて、リカルドの顔を見ることができなくなっている。


「あら、この新作のケーキ美味しいわ!新鮮なベリーの酸っぱさがクリームと良く合うのね?あら?ミシェル。食べないの?」

「あ!あぁ・・・い、いただきます・・・」

 ケーキにもの凄く小さくフォークを入れ、ほんのちょっぴりだけ口に運んだ。

「お、美味しい・・・です」


「ちょっと、ミシェル。緊張し過ぎよ。それじゃ、味なんて判らないでしょう?」

「で、でも!」

「あ!私、忘れていたわ!アニエス様に魔法での治療の本を借りることになっていたの!ちょっと席を外すわね」

「あ!レティシア様!」


 レティシア王女が部屋を出ると、その後直ぐに扉をノックする音が響いた。

「コンコン!」

「ガチャ!」

「失礼いたします!フェリックス様、エリアス様がお呼びです」

「ん?エリアス様が?あぁ、ダンスパーティーの警備についてか・・・リカルド様、少し席を外させていただきます」

「うん。仕事ならば仕方がないな」


 そして、レティシアの部屋にはリカルドとミシェルのふたりだけとなった。


「ミシェル、ふ、ふたりだけになったのなんて・・・は、初めてだね」

「は、はい!そ!そうです・・・御座います?ですね」

 ふたり共、異常とも言える程の緊張に包まれている。


「あ、あの・・・ミシェル、こんなこと、聞いて良いか判らないのだけど・・・」

「な、何で御座いましょう?」

「ミシェルには・・・す、好きな人とかって・・・い、居るの・・・かな?」

「え?わ、私・・・で、ご、ござ、御座います・・・か?そ、そんな、滅相も御座い・・・ません!」


「そ、それは居ないってことで・・・良いのかな?」

「はい。居りません・・・です!」


「ゴホンっ!」

 リカルドは居住まいを正し、一度立ち上がると、その場に膝を付いた。


「あ、あの!ミシェル・バーナード」

「は、はい!」


 ミシェルはリカルドの態度に更に緊張し、背筋をピーンと伸ばして自分の両ひざに両の手を固く握って置いた。


「ぼ、僕は初めて君に逢った日から、君のことばかり考えて・・・頭から離れないんだ」

「え?えーっ!」

 ミシェルは両手を口に当てて驚きの声を上げた。


「ミ、ミシェル、どうか、僕と結婚して欲しい!」

「け、結婚?!」

「ど、どうだろうか?」

「わ、私・・・私でよろしいので御座いますか?」

「だからさっきから言っている。ミシェルのことしか考えられないんだ!」


「ほ、本当に?」

「あぁ!本当だ!こんなこと!嘘をつく訳がない!好きなんだ!」

「あ。す、好き?」

「あーっ!言ってしまった!あぁ、そうだ。ミシェルのことが好きだ!」


「わ、私も・・・殿下のことが・・・す、好き・・・で・・・す」

「ドーンっ!」

「うわぁーっ!」


「な、なに?」

「ひ、ひぃーっ!」


 その時、ドアが急に開かれ、エリアス、アニエス、レティシア、フェリックス、フィオナが部屋になだれ込んで来た。


「あーっ!お兄様!聞き耳を立てていたのですか!」

「いやぁ、ばれたか!フェリックスが押すからだよ?」

「い、いえ、私ではありません!アニエス様が力一杯押していました!」

「あ!ばらさないでよ!」


「お兄様、何をしているのですか!レティシア様まで!」

 レティシアは立ち上がると、ミシェルに飛び付き、抱きしめた。

「ミシェル!良かったわね!」


「やれやれ、世話の掛かる妹だ!」

「本当に!世話の掛かる弟も居るよ。兄貴って大変だね?」

「本当ですね。エリアス様!」

「それにしても良かったわ。ふたりが相思相愛で!」


「相思相愛?なのですか?私たち」

「ミシェル、まだそんなこと言っているの?さっきのリカルド様の言葉を聞いていなかったのかしら?」

「レティシア様、それは・・・聞いていましたが・・・」

「そう、信じられないのね。まぁ、それは直ぐには仕方がないわね」


「ミシェル!信じてくれ!僕の気持ちは本当だ!」

「あ!リカルド様。も、申し訳ございません!疑ってしまって・・・ちょっと、いえ、凄く、すごーく!驚いてしまったのです!」

「そうか。良かった。では良いのだな?結婚のこと」

「あ、は、はい。喜んで・・・」

 ミシェルはハニカミながら答えた。


「おめでとう!ミシェル!良かった!」

「リカルド、おめでとう!よく頑張ったな!」

「おめでとう!リカルド、ミシェル!」

「アニエス様、ありがとう御座います!」


 そしてリカルドは、ミシェルの手を引いてお父様の部屋へ向かった。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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