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無能皇子と黒の聖女  作者: 空北 直也
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80.連鎖

 フェリックスはフィオナの手を握り、僕に向かって話し始めた。


「エリアス様、お願いが御座います」

「え?いきなりどうしたんだい?」


「私とフィオナ嬢の結婚を認めていただきたいので御座います」

「キャーッ!」

 ジュリアとレティシアが思わず黄色い叫び声を上げた。3人のお母様たちも口に手を当て、頬を赤く染めた。


「結婚?!それは良かった!勿論、祝福するよ!」

「ありがとう御座います!」

「あ、ありがとう・・・ご、御座います」

 フィオナは真っ赤な顔をして、息も絶え絶えにやっとのことで礼の言葉を発した。

恐らく、フェリックスが手を握っていなければ、その場に崩れ落ちているのではなかろうか。


「もしかして、フェリックスは以前からフィオナのことを知っていたのかい?」

「はい。2年前からフィオナ嬢のことを見ておりました」

「そうか、これは運命だったんだね」

「はい。リカルド様の護衛に抜擢され、フィオナ嬢と再会した時、そう感じました」


「では、レオンとグレースの様に、ふたりは夫婦になって一緒に仕えてくれるのだね?」

「はい。先程、フィオナ嬢にそうなりたいと伝え、承諾いただきました」


「はぁ~、男らしいわ!素敵ね!」

「そうね、グレース。レオンはどうだったの?」

「レオンは・・・レオンよ。私は比べたりしないわ」

「グレース!」

「ちょっと!いちゃいちゃしないでよ!」


「あらあら、でも凄いわ。幸せが連鎖していくのね!」

「連鎖?どういうこと?」

「私とレオンが結婚し、子を授かり、エレノーラ様が生還されたわ。そして、エリアス様とアニエス様が婚約されて、続けてフェリックス様とフィオナが婚約するなんて!」

「そうなると、次は・・・」


 レオンがグレースを見て、続けてジュリアの顔を見つめて言った。

「え?な、なに?わ、私?」

 ジュリアが赤い顔をして自分の胸を指差し、レオンとグレースの顔を交互に見て狼狽うろたえた。


「ちょっと!レオン様、グレース様。ジュリア様を追い詰めないでください」

「あ、キース!」

「そうだね。勢いが必要な時もあるのだろうけれど、ジュリアには時間も必要だよね」

「エリアス様。ありがとう御座います」


 きっと、ジュリアは追い込んでは駄目なタイプだ。キースもそれを解かっているのだからじっくりと熟成させればいい。

それよりもフェリックスたちを見ていた、ガブリエルとレティシアの気落ちの方が心配だな。


「エリアス様、フィオナ嬢との結婚はシュルツ家に報告すべきでしょうか?」

「いや、フィオナは私の侍従として引き取ったのです。結婚は私が許可し、シュルツ家には私から申し伝えます」

「承知致しました。では結婚については私の方で進めさせていただいてよろしいでしょうか?」

「構いません。結婚式には私たちも出席しますよ」


「エリアス様、ありがとう御座います」

「でも、結婚はフィオナが学校を卒業してからで良いのだよね?」

「勿論で御座います。婚約だけは発表しておきますが」

「うん。良かった。おめでとう!」


「フェリックス様、フィオナ。おめでとう!」

「おめでとう!」

「ありがとう御座います」


 そして今夜のダンスの練習は終了し、解散した。

僕は肩を落としたまま廊下を歩いて行くガブリエルとレティシアに追い付き声を掛けた。


「ガブリエル、レティシア。ちょっと私の部屋へ寄ってくれないか」

「え?あ、はい。承知しました」


 僕とアニエス、ガブリエルとレティシアは僕の部屋へ入り、対面するソファに二人ずつ並んで座った。


「ガブリエル、レティシア。フェリックスたちの幸せそうな姿を見て肩を落としていたね」

「あ、そ、それは・・・エリアス様には全てお見通しなので御座いますね」

「それで、二人は結婚する意志はあるのかい?」

「え?結婚・・・で御座いますか?」


「レティシア、その言い方は考えていなかったのかな?」

「あ、い、いえ・・・」

「あ、あの!ぼ、僕はレティシアと結婚したいと考えています。でも・・・」

「あぁ、司祭が指名手配された犯罪人だから、その息子である君は、アルフォンソ王国の王女と結婚など、到底認められないだろうと考えているのだね?」


「仰せの通りに御座います」

「レティシアも同じかな?」

「はい」


「レティシア、ご両親はやっぱり、聖女である娘は次期皇帝となるリカルドの妻になるものと考えているのかな?」

「はい。仰せの通りに御座います」

「そうか。それが犯罪者の息子となれば、仰天することだろうね」

「そう・・・ですよね・・・当然のことです」


「まぁ、普通はそうだろうね」

「エリアス!」

「わかっているよ、アニエス。ガブリエル、ごめんよ。少し、意地悪な感じになってしまったね」

「いいえ、事実ですから」


「ひとつ提案があるんだ」

「提案?で御座いますか?」

「うん。神殿の在った場所に私の城を建てる。そしてそこには聖アニエス病院も併設する。それは知っているね?」

「はい。伺っておりました」


「聖アニエス病院には、医学で治療する医師は置かない。そういう病院で治せない病気を持った患者を聖属性魔法で治療する専用の病院だ。その医師は、私とアニエス、先程居た3人のお母様方だ」

「聖属性魔力を持った方たちですね」

「そう。だから二人もその病院で働かないか?」


「私、働きたいです!私の夢なのです!アニエス様の様に人々の苦しみを癒したいのです!」

「うん。レティシア、ありがとう。それでね。二人共私の侍従となって生涯に渡って尽くすと誓うんだ。城には二人の住まいも用意するよ」


「本当で御座いますか?!」

「でも、アルフォンソ王には・・・」

 レティシアは素直に喜んだが、ガブリエルはまだ理解できていない。


「ガブリエル、私は神と言われているよね?」

「はい。エリアス様は光の神に御座います」

「その神が、アルフォンソ王に命じるんだよ。その方の娘を私の侍従として捧げよと。そして時間を置いてから、同じく私の侍従となったガブリエルと結婚させると伝えるんだ。そうすれば拒むことはできないでしょう?」


「あぁ!神様!ありがとう御座います!」

「エリアス様、感謝いたします!」

「うん。ではその様に進めようか」




 レティシアは学校で護衛のミシェルと常に一緒に行動している。

今日も一緒に魔法の授業に出ていた。

「レティシア様、なんだかすっかり雰囲気が変わりましたね。何かあったのですか?」

「え?ミシェル、判るの?」


「それは勿論、私はレティシア様の護衛ですから。常にレティシア様を見守っておりますので、変化は敏感に感じ取ります」

「凄いわ!そうなのね・・・私ね、夢が叶いそうなの」

「夢・・・で御座いますか?」

「えぇ、アニエス様の様に聖女として、聖属性魔法を使って病気の人を癒したいの」


「あ。もしかして、エリアス様が建設される病院に勤務されるのですか?」

「勤務?あのね、私とガブリエル様は、エリアス様の侍従になるの」

「え?二人共侍従に?レティシア様は王女でいらっしゃるのに侍従になるので御座いますか?それでは私の兄と同じではありませんか!」


「あぁ、そうね。お兄様も幸せそうだったわ」

「あ、聞きました。フィオナ様と婚約したそうです」

「だから、私も同じなの」

「え?同じ?あ!そういうことですか。侍従となった上で、ガブリエル様と?」

「そうなの!」


「それは・・・お、おめでとう御座います!」

「ミシェル、驚いているわね!」

「え、えぇ。私の身の回りの人が次々に結婚を決めるのですから・・・」

「ミシェルはどうなの?」


「わ、私には・・・その様なお方はまだ・・・」

「本当に好きな人は居ないの?」

「それは・・・」

「ほら、居るんじゃない!それって・・・」

「あ!駄目です!言っては!」


 ミシェルは大慌てで、レティシアに飛びつく様にして言葉をさえぎった。


「どうして駄目なの?言うくらい構わないでしょう?人を好きになる気持ちに嘘はつけないのよ?」

「それでも・・・あのお方は・・・」

「それってもう、言っている様なものよ?口に出してはいけない高貴なお方って、エリアス様でなければあと一人しか居ないわ!」


「あぁ・・・だからです。そんな夢みたいなことを言ってはいけないのです!」

「夢みたい?そうかしら?だって聖女のアニエス様と私には既に決まった人が居るのよ?では、もう一人の皇子様は誰と結婚すればつり合いが取れるのかしら?」

「私には・・・判りません」

 既にミシェルは真っ赤な顔になってしどろもどろになっている。


「あのね。今、結婚適齢期の王女は5つの国で私だけなのよ。次に候補になるのは公爵令嬢でしょう?あなたは何?」

「そ、それは・・・一応、公爵の娘ではありますが・・・」

「ほら、ミシェルが第一候補なのよ。それにね。リカルド様は初めからミシェルしか見ていないと思うけど?」


「そんな!私なんて!」

「ミシェル、フィオナ様みたいなこと言わないで。あなたは立派な公爵令嬢です。それも帝国の騎士団長の娘。魔力だって父親譲りで100もあるのでしょう?」

「それは・・・そうですが・・・」


「入学してからのことを思い出してみて?リカルド様って食事の時に話したのは全てミシェルに話し掛けたものだけなのよ?」

「え?そ、そうでしょうか?」

「えぇ、そうよ。リカルド様はミシェルしか見ていないし、ミシェルのための言葉しか発していないわ」


「ほ、本当ですか?」

「それではエリアス様に聞いてご覧なさい。あの御方は何でもお見通しなのですから」

「エリアス様が?リカルド様と私のことを見ていらっしゃるのですか?」

「エリアス様はとても家族想いの方なの。リカルド様が一緒だと常に見守っていらっしゃるわ。リカルド様が見つめるミシェルのこともね」


「そ、そんな!」

「ねぇ、リカルド様のことが好きじゃないの?それとも皇妃になることが怖いの?どちら?」

「あ、あ、そ、それは・・・好きじゃない訳ない・・・です。こ、皇妃になる・・・なんて・・・考えたことも・・・ない・・・です」


「そう、リカルド様のことは好きなのね?わかったわ。でもそうね。皇妃になるなんてこと、普通は考えないものね?」

「は、はい・・・」

 ぷしゅるるーっと、ミシェルは真っ赤な顔をして小さくなっていった。


「ふふっ、ミシェルって可愛い!」

「うぅっ、レティシア様、そんなにいじめないでください!」

「いじめてなんていないわ!ミシェルに幸せになって欲しいのよ。私たち友達でしょう?」

「はい。そうです!そうですが・・・」


「あら?ミシェルは私とガブリエル様が結婚して幸せになることが嬉しくない?」

「いいえ!嬉しいです!応援しております!」

「そうでしょう。だから。私にもミシェルを応援させて欲しいわ!」

「は、はい・・・あ、ありがとう・・・御座います」




 僕はアニエスに相談した。

「アニエス、フェリックスも侍従になったから、ペガサスに魔力を増幅させてもらおうか?」

「あぁ、それだけど、もしかしたらエリアスでもできるのではないかしら?」

「僕に?」

「だって、ドラゴンと同等の力があるのよ?全ての属性も持っているのだしね」


「あぁ、そうか・・・でもどうやってやるのだろうか?」

「考えるだけでできるんじゃない?魔力器官を整えて最大の力が出せる様にって」

「なるほど。やってみようか」

「えぇ、上手くいかなければルーナに頼みましょう」

「そうだね」


 夕食後に皆にサロンに集まってもらい、魔力の測定装置も運び込んだ。

「フェリックス、私の侍従は皆、聖獣たちに頼んで魔力を増幅してもらっているんだ」

「それは素晴らしいですね」

「それで、風属性を持つフェリックスはルーナに頼もうかと思ったのだけど、アニエスが私でもできるのではないかと言うので試してみようと思うんだ」


「え?エリアス様が私の魔力を増やして下さるのですか!」

「まだ、できると決まった訳ではないんだ。できるか試してみたいんだよ。駄目だったらルーナに頼むからね」

「はい。お願いいたします」


「では、まず、今の魔力を測定しようか」

 測定器で測ってみたら、フェリックスの風属性魔力は90だった。まぁ、それでも十分に強いのだけどね。


「では、魔力器官を整えて最大魔力が使える様にしてみよう」

「お願いいたします」

 フェリックスをソファに座らせると背後に回り、首筋に両手を置いて魔力を流し始めた。


 僕の腕は金と白に光り、髪の毛も真ん中から金と白に輝いた。マナの輝きで周囲が明るくなった。

「身体が暖かいです!」

「うん、このままもう少し、力を流すよ」


 皆が固唾を飲んで見守る中、施術は終了した。

「では、魔力を測定してみよう!」


 フェリックスの魔力を測定すると、風属性魔力が100になっていた。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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