4節目
御前天使。それは創造主と共にスプリジョンの創造時に現れた天使であり、名前の通り、創造主との謁見が許された唯一の存在だという。彼らが人間の中から見初めた神の代弁者が御使いとされ、その補助や護衛の為に下界に降臨するという。
「それでは、現れたドラゴンに乗っていた真なる御使いと御前天使を名乗る者たちが本物であると、永世王はお思いですか?」
フランツの指摘に永世王は少し考えた後に返答する。
「突如現れたかの者たちが本当に御使いと、御前天使であるかは我らにはまだ判断できぬ。だが、霊峰サントロンの噴火の直後に現れたのであっては無関係とも思えぬ」
「それでしたら、我々が実際に彼の者たちの事を調べに赴きたいと思います。それまで永世王殿たちは聖教国との和睦に向けて努めて下さい」
そう言って、フランツの言葉で貝紫たちへの疑惑は少しは晴れた。流石、魔物と言われていたオーディナとも交流していただけあって、堂々とした返答ぶりに貝紫も感心した。
「それじゃあ、カイ。あのドラゴンの後を追ってみようよ~」
ドラゴンに乗っていた連中は自分たちを創造主の真たる御使いと言っていた。それであれば御使いだけが使えるグラマトンを使える貝紫たちは何なのか。それを確かめる必要があった。
「ああ、ありがとうフランツ。お前も一緒に来てくれ。グラマトンの力を使えるなら、お前も御使いの可能性があるんだ」
「ぐるる!」
ハーラが突然貝紫の前に踏み出た。最初は何事かと思ったが、ハーラはぽつりぽつりと話し出した。
「フランツ、行く。私、一緒、行く」
「ハーラもついてきてくれるの? いると心強いな~」
「というか、ハーラこっちの言葉を喋れるようになったんだ……突然何事かと思ったよ」
要塞でフランツと一緒に長く過ごしていたおかげか、ハーラは自力でこちらの言葉を学んでいたようだ。まだ拙いがそれでも十分考えは分かった。
「主、サントロンは聖教国側にあります。リッジ砦を通ることになるので、ロッソ殿たちにも助力を頼みましょう」
サントロンの噴火はロッソたちも気づいているだろう。あの光り輝くドラゴンの存在も既に知っているかもしれない。
「先にグラマトンで連絡を取っておく。シノーメはその間、馬の準備をしておいてくれ」
こんな形でロッソたちと合流することになるとは貝紫にも夢にも思わなかった。あの真たる御使いを名乗る者たちは何者なのだろうか。頭の中で渦巻く疑問をひとまずよそに、貝紫はロッソの考えを聞くためにグラマトンを唱えた。




