3節目
それは白く輝く大きな竜、おとぎ話や空想でしか存在しえないはずのドラゴンだった。これまで見た聖域の守り神である二足歩行する巨人のような聖獣とはまた違う、現実世界で直接見る事はない架空の生物だ。現実世界では存在しえない色々なものを見て来た。しかし、ドラゴンという存在は知ってはいるものの、実際にその存在を見るのはこの異世界でも初めてだった。
光り輝くドラゴンは要塞の上空で滞空すると、地鳴りに負けない程大きな声が聞こえてきた。というよりも直接脳内に響くような、テレパシーのような物だった。
「予言の時は来たれり。御前天使と共に真たる御使いによって審判の時が下る。偽りの御使い共の踊らされた咎人は滅び、その屍の上に楽園が築かれん」
よく見れば、ドラゴンの背には数人の人の影が見える。ローブを目深に被っていてその正体は分からないが、確かに人が乗っている。この聴こえてくる声は彼らの物だろうか? 御前天使? 真たる御使い? 貝紫には言葉の意味はよく分からなかったが、自分たちがまがい物扱いされているという事は分かった。
「次にサントロンが火の柱を上げた時、この世の罪は一切が灰へと帰す。咎人は悔い改めよ。悔い改めよ……」
そう言葉が消えた後、ドラゴンは振り返り、霊峰サントロンへと向かって消えた。後に残ったのは多くの疑問だけだった。
「主、今のは一体……?」
「俺だってわかんないよ。真たる御使いってどういうことだ?」
そう思っていると、衛兵の一人がやってきた。
「御使い殿、永世王がお呼びです。今すぐ謁見の間に集まって下さい!」
数多くの疑問を抱えたまま、貝紫たちはアロンズ永世王の待つ謁見の間へと急いだ。謁見の間にはすでに多くの騎士や家臣が集まっており、フランツもその場にいた。
「あ、カイ! さっきの見た? ピカピカに光るドラゴン!」
「ああ、見たさ。あれはいったい何なんだ?」
ざわざわと周囲の人々もその疑問の答えを求め、隣同士で考えを言い合っている。そのざわめきをアロンズ永世王の一声が止める。
「静粛に!」
ぴたりと声が止み、それを確認した永世王が話し出す。
「突然の事で皆の混乱はよくわかる。だが、我らの前には実際に力と結果を見せた御使い殿がいる。彼らの意見を聞いてみようではないか」
永世王のお陰で場がまとまったが、今度は御使いである貝紫たちにみんなの関心が移った。何を言えばいいのか迷っていると、フランツが先に口を開いた。
「まずお聞きしたいんですが、彼らの言っていた御前天使とは何なのです?」




