7節目
貝紫はシノーメを連れてジュノ要塞へと戻ってきていた。衛兵や従者たちの様子を見ていると、心なしか皆どこか意気消沈しているように感じた。衛兵に謁見の間に通されると、アロンズ永世王が一人玉座に座っており、そこにシャール王の姿はなかった。
「御使い殿、改めて礼を言わせてもらおう。汝のお陰で我々は余計な争いを起こさずに済んだ」
アロンズ永世王は感謝の言葉を述べて頭を下げた。威厳は保っている物の、彼の声のトーンは明らかに落ちていた。自分の身内が良からぬ企みを行おうとしていたのだ。無理もなかった。
「ジュノ要塞は今後、信頼のおける部下に任せることになった。魔物たちの事を完全に信用したわけではないが、彼らとの交渉や対応に力を入れてくれるだろう。それは我が保証する」
「私の友人も一緒にいますから彼を通して貰えれば、きっと上手くいくはずです。一つお聞きしたいのですが、シャール王はどうなりますか?」
「弟……シャール王はブッキラ城まで連行し、そこの一室でしばらく我の直接の監視下に置くことになる。少なくとも、処刑することはないから御使い殿は気にせずにしてもらっていい」
彼も決して悪意があったわけではなかった。ただ、やり方さえ間違えなければこんなことにはならなかったはずだ。功を焦り、責任と取るべき手段を掛け違えてしまっただけだ。
「時に御使い殿、今回の件で我は汝への考えを改める事にした。前に汝の言っていた聖教国との和睦の件、検討してみることにしよう」
「それは本当ですか!」
「勿論、色々と条件はある。それに向こうが受け入れるかは我々のあずかり知るところではない。しかし、長く続く戦争は民や臣下にも悪い影響が出る。それは見過ごすことはできない。故に戦争を早く終わらせることができるなら、御使い殿の考えもそのための手段として視野に入れる事にしたのだ」
それだけでも貝紫にとっては行幸だった。アロンズ永世王が戦争の方針を変えてくれただけでも、今回の事件には意味があった。それが何よりの救いになった。
「流石永世王殿! 立派なお考えです!」
思わず軽口を言ってしまったが、それもアロンズ永世王の表情を綻ばせる程度には意味があった。
「ふふっ、御使い殿も各地を奔走してお疲れであろう。今夜はこちらの要塞で休まれよ。今回の功労者である汝がいてくれるだけでも、要塞の者たちも気が休まるはずだろう」
貝紫たちには特別に部屋が与えられ、その晩は要塞で過ごすことにした。その間も、グラマトンの能力で友人たちに吉報を告げて、その成果を称え合った。




