6節目
「今の話、全てこの耳で聞いていたぞ御使い殿、シャール王……」
アロンズ永世王が話し出す。その声は失望に溢れ、沈痛な面立ちだった。
「最初、いきなり御使い殿が顔を見せた時は驚いた。そして、その考えにも……魔物たちとの和解を目指していたが、それを阻もうとしている者が我々の中にいると……とても信じ難いものだった」
「だからこそ、実際に見て聞いていただきたかったのです。御使いの使うグラマトンの力で」
この作戦はシノーメの立てたものだ。遠方の相手と空間を越えて連絡が取れるグラマトンの能力。これでアロンズ永世王と直接会話し、事情を説明する。そして、疑わしいシャール王の本心を暴く所を彼に直接見せて聴かせる。これならば彼も信じざるを得ないという状況を作るというのだ。
そしてその結果は見事成功した。それが永世王たちにとって都合の悪い物だとしても、受け入れなければならない。
「兄上、私はただ貴方に認めてもらいたく……」
「だからこそ、正しい手段で治めて欲しかったのだ。王として、兄として……」
身内びいきを感じさせないようにあえて辺境の、重要な土地を任せたのはシャール王への信頼と期待のつもりだったのだろう。だが、それが彼をこのような手段を取らさせることになった。
「戻ってくるのだシャール王。魔物の討伐は中止だ。彼らには少しも手出しするな。分かったな」
徐々に空間が閉じてゆく。グラマトンの能力が終わりかけている。
「兄上……!」
名残惜しそうに手を伸ばすシャール王を一瞥し、アロンズ永世王は再び顔をそむけた。そして、空間は無情にも完全に閉じ切ってしまった。シャール王は膝をついてそのまま放心したように地面に這いつくばった。
「カイ、そっちはどう~?」
フランツがやってきた。討伐隊の動きを止めていたのは彼のグラマトンのおかげだった。少し離れた所から上手く討伐隊の兵だけを無力化してくれていた。
「作戦は成功した。でも、ちょっとそっとしておいてやろう。シャール王たちはもう手出ししないはずだよ」
残酷な結果ではあったが、争いは起こることなく終わった。しかし、争いと言うのは平和裏に事を進めても必ず誰かが傷つくことになるものだと貝紫は思った。
しばらくして、討伐隊が引き返していくのを貝紫たちは確認した。もう少ししたら貝紫たちもジュノ要塞に戻り、シャール王たちの処置を知りに行くつもりだ。争いを引き起こそうとしていたシャール王だったが、貝紫は彼があまり重い罰を受けないことを祈った。




