4節目
「いたぞ、魔物どもだ!」
ついにシャール王が討伐隊を率いてオーディナの野営地までやってきた。小高い丘の上から野営地を見下ろしている。
「奴ら、こちらへの迎撃を準備をしていると思っていましたが、何も用意していませんね」
「それは都合がいい。全軍突撃して一気に畳みかけるぞ」
討伐隊の兵たちは魔物から仕掛けて来たので、道中にも何らかの妨害があると思い慎重に進んできていた。しかし、その間にも妨害や奇襲など受ける事もなく、魔物の集団を見つける事が出来て不思議に思う者もいた。
「所詮はその場の事しか考えぬ蛮族という事よ。しかし、これで魔物どもを討ち取ったらならば、私の功績を兄上は認めざるを得ないだろう……」
シャール王は既に魔物を討ち取った後の事まで考えて、一人ほくそ笑む。
「全軍突撃! 奴ら魔物を一匹残らずうち滅ぼせ!」
「おおー!!」
シャール王の言葉に討伐隊の兵たちが呼応して雄たけびを上げる。皆、騎士で馬に乗ってオーディナの野営地に向かって駆けだす。
「うおおおおお!」
剣を手に馬を走らせるが、最初は地面を揺るがすほどの馬の突撃音が、徐々に少なくなっていることにシャール王は気づかなかった。
「おおおお……おお?」
気づいてふり向いたときには、後続の討伐隊の兵や馬たちが皆足を止めて一緒になって地面に伏せていたことに驚きの声を上げる。
「おい、貴様ら! 敵を目の前に何をやっている!」
「それが王~」
「妙に和やかな歌声が聴こえてきたと思ったら、馬が走るのをやめてしまって~」
兵も馬も先ほどまでの闘志はどこへやら、すっかりやる気をなくし、力なく返事をするだけだった。中にはあくびをしてその場に寝転がる者まで現れ始めた。
「何を貴様ら敵を前に呑気な事を……!」
「シャール王、どうか落ち着いてください」
だらけ切った兵の声に紛れて、強い意志を感じさせる声が響いた。まだ闘志の残った兵がいるかと思い振り返るが、そこにはいつの間にか御使いの少年が立っていた。
「御使い殿! 今までどこに……もしやこれは貴様の仕業か!」
「シャール王、あんたの考えに邪な思いがないか聞かせてもらう!」
貝紫がシャール王に向けてグラマトンを唱える。使うのは相手の心の声を聞く能力だ。
「サン オーラ ノリアニマ ホシテ!」
シャール王の身体から分身が姿を現した。目の前の出来事にシャール王は驚いて思わず後ろに下がった。半透明で僅かに光っているシャール王の分身がその思いを口にし始める。




