3節目
「みんな起きろ起きろ起きろ! 今はのんびりしてる状況じゃないんだって!」
シャール王が何時討伐部隊を連れてくるか分からない状況なのだ。貝紫はみんなを揺さぶり起こす。
「ふう、相変わらずグラマトンの力は想像を超えてきますね……そして主、我々はこれからどうするべきでしょうか」
「その事なんだけど、俺のグラマトンがあれば永世王の襲撃者を見つける事自体は可能だと思う」
相手の心の内を知ることができるグラマトンの能力。確かに子の力なら片っ端から使っていけばいずれ犯人を炙り出すことはできるだろう。
「でも、この力をみんなが信用してくれるかは分からない。それに、そんなことをしてる時間の余裕もない」
諸侯同盟は魔術や超常的な力には半信半疑な者が多い。例えグラマトンで襲撃者を見つけたところで、それをすぐに信じてくれるとは思えなかった。
「みんな魔物、オーディナの人たちの仕業だと思っている。討伐隊が来たら話も聞かず、いきなり攻撃するだろう」
オーディナ人たちも決して友好的とは言えない。相手が敵対するなら、容赦なく迎え撃つはずだ。どちらが勝つにしても大きな犠牲が出る争いになるだろう。
「僕の歌で止める事は出来ないかな~?」
「いや、それじゃあ一時的な時間しのぎしか出来ないと思う。フランツだって休むこともなく一日中この力を使い続ける事は出来ないだろう?」
「確かにずっと歌い続けるのはきついかも~」
他に手はないか貝紫たちが思案していると、その中でシノーメが手を上げた。
「主、私に考えがあります」
「どんな?」
「確実……とまではいきませんが、この件で一番怪しいのは動きが早かったシャール王だと私は思います」
「永世王の弟のシャール王が?」
言われてみればアロンズ永世王が襲撃された際、真っ先に指揮をしたのはシャール王だ。でも、何故そんなことを弟である彼が?
「主の能力で彼の心の内を聞いてみるのです。彼は討伐隊を率いているので、いずれ向こうからやってくるでしょう」
「でも、グラマトンの力で心の内を読んだ所で周りは信じてくれるとは思えないぞ。相手は王様だし……」
シャール王の方が周囲の影響力が大きい。例え何かこの襲撃に関係があったところで、貝紫たちよりも彼の言葉の方を信じる者の方が多いだろう。
「それならば、より影響力のある者に話を聞いてもらうのです」
シノーメがその考えの詳細を説明する。貝紫もその方法が最適だと思った。フランツを通してオーディナの人々にシャール王率いる討伐隊への攻撃を遅らせるよう説得した。もし成功したならば、争いが起こることなく事を収められるはずだ。




