2節目
「サン オーラ ノリアニマ ホシテ(我は求める。諸人の祈りと心を、その言葉によって)」
貝紫がグラマトンを唱えるとハーラの身体が淡く光り、半透明のもう一人のハーラが目の前に出現した。
「わっ、すご~い! カイが歌ったら何か出て来た~!」
フランツが貝紫を褒める一方、ハーラやシノーメ、周りのオーディナたちは突如現れた半透明のハーラの存在に驚愕していた。すると、半透明の方のハーラが語り始めた。
「創造主の御使い様の仲間の二人組……不思議な力を使った……あれも同じ御使いの力ではなかろうか」
「驚いた。この分身は人間の言葉をしゃべっている!」
「ぐるる! がぁっ、がぁっ!」
本物のハーラが自分と分身を交互に指さして何か話している。
「何て言ってるんだ?」
「う~んと、自分の思っていることを分身が話してると言ってるみたい。ハーラにも分身の言葉が分かるみたい~」
このグラマトンは相手の心で思っていることを分身に話させる能力なのだろう。それも貝紫やシノーメだけでなくオーディナのハーラにも分かる様に聞くことができるようだ。やがて分身の方は徐々に姿が薄くなり、やがて完全に消えた。
「これなら、オーディナの人たちの言いたいことが分かる! 流石グラマトンの力だ!」
「あの歌、グラマトンって言うの? 前にオーディナの人たちも似た歌を歌ってたよ~」
聖域の聖獣と同じで、魔物たちにもグラマトンと関りを持つ存在がいるようだ。
「この歌を聴いて一緒に歌ったら、僕の事仲間と認めてくれたんだよね~」
そう言ってフランツが歌い出した。
「リオ ガルグ オーム ナラ(我は命じる。等しき 意志と力を 与えん)」
やはりフランツが歌った物もグラマトンだ。その力を貝紫は確かに感じた。ロッソと同じでフランツにもグラマトンの力が使えるのか。貝紫がそう思っていると、シノーメやハーラ、オーディナの人々が急にその場に倒れ込んだ。
「ど、どうしたんだ皆!」
貝紫には影響はなかった。同じグラマトンを使える御使いには影響はないようだが、まさかかなり強力なグラマトンなのかもしれない。
「い、いえ主……なんだか急に身体から力が抜けて……」
「ぐろ~」
ハーラやオーディナの人たちはあくびをしたり、だらりと緩み切った状態になっている。普段の警戒した状態から急にフランツの様にのんびりとした状態になっているようだ。
「風が気持ちよくて眠くなってきました……ちょっとだけ眠らせて下さい主~……」
シノーメに至っては言葉遣いまでフランツの様に間延びし始めている。フランツのグラマトンはある意味で恐ろしい力があるようだった。




