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美少年の声は世界を救うようです  作者: 八田D子
フランツとハーラの交響曲 後編
86/114

1節目

「あ、カイが戻ってきた~どうだった~?」

 シノーメの記憶を頼りに魔物たちの野営地へ戻ると、フランツがその前で待っていた。魔物たちに合図を送って、貝紫たちが敵でないことを伝える。

「向こうはかなり殺気立ってる。本当にここの魔物たちは永世王を襲ってないんだよな?」

「少なくともここ最近は一人で出て行ったり戻ってきた人はいないよ。それに魔物じゃなくて、ここの人たちは自分たちの事をオーディナって言ってるよ~」

「ああ、魔物じゃなくてオーディナね……でも、それじゃあ王を襲撃した奴は何処へ行ったんだ?」

 貝紫たちは馬で急ぎ戻ってきたが、その最中にも怪しい人物はいなかった。それなら、アロンズ永世王を襲った犯人は、どこへ消えたのだろうか。

「主、私も気になる事があります。襲撃の時、放たれた矢は王をわざと外したような、無暗に射て暗殺者が自分の位置を知らせるだけのように感じました」

「そうなのか?」

「少なくとも、腕に覚えがあるなら外すような距離ではないと思います。それに魔物……オーディナ人にはもっと腕の立つ射手がいます」

 そう言って、シノーメはフランツの隣にいるハーラを見る。

「ハーラはずっとオーディナの人たちといたよ~それに、弓に自信のある人はみんな自前の弓を持ってるから、それを残していくなんてありえないって~」

「どんな物か見せてもらっていいか?」

 フランツがハーラという魔物、オーディナに話しかける。ハーラの弓を指さして貝紫たちに見せてあげる様に会話しているようだ。

「ぐるる……」

 ハーラは不服そうだが、渋々弓を取り出して貝紫たちの前にかざした。オーディナの人たちは自分たちで武器を自作するらしいが、素材は木を軸に、骨や石で補強した独特の作りをしている。あまり木々のないハナカルタの地では木材は貴重そうだ。

「こちらに来る前に、襲撃者が残していた弓を確認しておきましたが、我々が使う様な普通の物でした。盗まれたり奪われたしたものを使った可能性もあります」

「何度も言ってるけど、オーディナの人たちは自分の自作した物しか使わないからそれはないって~」

「があ!」

 フランツの言葉が分かるかのようにハーラが声を上げる。フランツがいるから辛うじて情報が手に入っているが、直接会話できなければオーディナ達からこれ以上分かることはなさそうだった。

「どうにかオーディナの人たちと会話できればなぁ……」

 その時、貝紫の頭の中で閃きが生まれた。イリンカの聖域の森で見つけたグラマトンが使える。そんな気がした。

「フランツ、ちょっと俺にハーラと会話させてくれ」

「いいけど、カイもオーディナの人たちの言葉が分かるようになったの~?」

 確信はないけれど、グラフトンの言葉の方から自分たちを使えと言われてる様な、初めて使う時に何度か感じたあの感覚が再びしている。貝紫は精神を集中させてグラマトンを唱えた。

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