11節目
「うーんマズい事になってるね~」
「みんなすっかりやる気になってる。どこか隠れる場所とかないのか?」
「そんな場所はなさそうだし、きっとみんな逃げたり隠れたりするより、戦う事を選ぶんじゃないかな~みんな血気盛んな人ばかりだし~」
フランツに聞いてみるが、とても戦いを避ける事は出来なさそうだ。だからと言って、目の前で惨劇が起こることを黙って見ているわけにはいかなかった。起こる争いを止める事も出来ず、聖教国と諸侯同盟の戦争だって止められない。その使命感が貝紫を突き動かしている。
「それにおかしいんだよね~ここの人たちが自分たちの物をわざわざその場に残して逃げるって~」
フランツがそんなことを言う。
「そうなのか?」
「一緒にいるハーラもそうだけど、ここの人たちって自分の持ち物を大切にするんだよね~特に弓なんて自分で作って個人の一品物みたいなんだよ~」
遠目に見たシャール王が証拠として持っていた弓は何処にでもありそうな普通の弓だった。確かにそれだと少し様子がおかしい。
「シノーメが掴んだ矢も、ちょっと変わった形してたな。それも魔物たちの手作りなのかもしれない」
ちょっと不自然な点が気になる。もう少し調べる必要があるが、急がなければ時間がない。
「ありがとうフランツ。やっぱりこの出来事、ちょっと怪しく思えて来た。討伐隊が向かう前に、そっちに行って自分も確かめたい」
「急いでね~」
討伐隊が組まれるにはまだ少し時間がかかりそうだ。怪しまれるかもしれないが、馬を一頭借りてシノーメと一緒に駆けだせば、討伐隊が来る前にフランツと魔物たちに合流できるかもしれない。
「シノーメ、馬を借りて魔物たちの所に急いで戻ってくれないか? この襲撃、何か裏がありそうだ」
「心得ました」
僅かでも見つけたきっかけに頼るしかない。今貝紫たちに出来るのはそれだけだからだ。自分たちにできる事を精いっぱいする。せめて後悔しないように。
ジュノ要塞の馬番を言いくるめて馬を借りると、要塞の衛兵たちには気づかれないように急いでフランツの下へ駆けだした。




