10節目
「フランツ! こっちだフランツ!」
「ん、あれ~カイじゃないか。どうしたの~?」
ロッソから教わった空間を越えて相手とコンタクトをとれるグラマトン。フランツは何も知らないはずだが、全く動じずに反応している。
貝紫はさっき起きた出来事をフランツに伝えた。
「え~そんなのおかしいよ。これまでそんな近くまで要塞に近づけたことなかったのに~」
「でも実際に目の前でアロンズ永世王が襲われたんだ。そっちの魔物たちが前から計画してたんじゃないか?」
「近づくだけならまだしも、そんな偉い人が来るなんてこっちのみんな誰も知らないと思うんだよね~誰か知っているか調べてみるよ~」
「頼んだぞフランツ。こっちもまた連絡する」
貝紫が話し終えると、空間の割れ目は小さくなっていき、何事もなかったかのように消え失せた。
「シノーメ、俺たちも要塞に行ってシャール王たちにどうなったか聞いてみよう」
人間と魔物の大きな争いに発展する前に、何とか出来ないか貝紫たちは行動を開始した。
***
「わが兵が下手人を探していたら、岩壁に弓といくつかの矢がまだ残されていた。間違いなくアロンズ永世王殿を狙って、潜伏していたに違いない」
「狡猾な魔物どもめ……もはや許さぬ!」
謁見の間でシャール王が証拠の弓をかざして騎士たちに見せつける。配下の騎士たちが怒りに燃えて声を上げる。御使いである貝紫も中に入れてもらえることはできたが、この状況で異論を唱えるのは到底できそうになかった。
「一匹残らず駆逐するべきだ!」
「今からでも奴らの群れを探しだすのだ!」
アロンズ永世王は無言だったが、その表情は険しく怒りに満ちていた。命を直接狙われたのだから当然だろう。
「これより魔物討伐隊を編隊する! 私が指揮を執りますので、兄上は護衛と共に要塞の中でお待ちください。その間、兄上の兵たちも私が引き受けます!」
諸侯同盟にとって永世王は大切な指導者だ。彼の身に何かあったら諸侯同盟は崩壊してしまうだろう。
「任せた」
一言はっきりと永世王は答えた。同意を得たシャール王が指揮を執り始める。刻一刻と魔物討伐への時間が迫っている。騎士たちも自ら名乗りを上げて討伐隊に加わってゆく。いくら魔物たちが強いといっても、士気も高く多くの騎士が集まった軍を相手にすれば、あっという間に全滅してしまう。もはや御使いの貝紫の存在は蚊帳の外の扱いだ。シャール王たちが謁見の間を出て行った後、貝紫も外に出て再びフランツへ状況を伝える事にした。




