8節目
「魔物たちと交渉するだと? 気は確かかね?」
貝紫たちはシャール王に事情を説明するため、一度ジュノ要塞に戻っていた。フランツと魔物たちにも生活が出来るようにシャール王へ相談をしてみたが、貝紫の言葉を聞いて彼は鼻で笑った。
「御使い殿は狼や鹿のような動物とも会話できるのであろうが、生憎我ら人間は普通獣相手に交渉なんてしないのだぞ?」
この世界の人間からしたら。魔物たちは獣とそう認識は変わらなかった。貝紫も最初はそう思っていたが、魔物もピンからキリまであることをこれまでの旅で学んできた。
「実際、ここの魔物たちは人間と同じく言葉を使えて、そう変わらないことが分かったんです。だから、そんな不可能ではないはずです」
「だが、奴らが奴らがこれまで人々を襲い、集落を滅ぼしてきたことは事実」
「それだって、戦争をしている俺たちと一緒じゃないですか! 同じ人間同士で争って、話し合いができるのにしないなんて……!」
「同じなどではない! 永世王……兄上もよく言っているが、我々の戦いは信と義のための聖なる戦いだ! 目先の物を奪うだけの魔物などとは訳が違うのだ!」
シャール王が本当にそう考えている事が言葉から分かった。だが、何かのため、特別な理由で戦争をするという考えは、貝紫にはあまり想像のできない物だ。
「それに、伝令の者が来てもうすぐ兄上が軍を率いてこちらに来られるそうだ。ついに魔物の掃討に乗り出したようでな」
「何だって!?」
アロンズ永世王が軍を率いて来る。そうなったら間違いなく魔物たちと一緒にいるフランツも巻き込まれることになる。何をするにしても残された時間は少ない。
「御使い殿には悪いが兄上を迎えなければならない。だからこれ以上、与太話に付き合ってる暇などない」
強引に話を切り上げられ、半場追い出される様に貝紫は謁見の間から出ることになった。
「くそっ! こうなったら少しでも時間稼ぎしないと……」
急いで貝紫はシノーメと合流し、この事を伝える。とりあえず自分たちもシャール王と共にアロンズ永世王を迎え、そこで再び説得することにした。
家臣たちと共に要塞の門前にシャール王は待機しており、二人も少し離れた位置にこっそり加わった。やがて道の向こうから、騎士たちを引き連れたアロンズ永世王が、堂々と騎乗して現れた。




