6節目
場に相応しくない呑気な声が響き渡る。弓を構えた魔物の前に何故か人間の、少年が一人姿を現した。両手を広げて敵意はない事を表している。そして、その姿に貝紫は見覚えがあった。
「お前、もしかしてフランツか? お前もこっちの世界に来ていたのか?」
「ああ~そのメッゾな低めの声質。やっぱりカイ?」
貝紫より頭一つ背の低いフランツと呼ばれた少年は、そう言うと魔物に何か話し始めた。弓を構えていた魔物は何度か唸った後、ようやく構えていた弓を下ろした。
「あの少年、主のお知り合いで?」
「ああ、ロッソと同じで一緒の聖歌隊のメンバー。斉藤フランツって友達。凄いのんびり屋でいい奴なんだ」
フランツは魔物一体ずつに何か話すと、彼らは武器を下ろしていく。しかし、にらみつける視線から敵意だけはビシビシと感じる。
「どうやら魔物と会話できているみたいですが、あれもグラマトンの力ですか?」
「いや、その感覚はないけどいったいどうやって会話してるんだろう……」
フランツは魔物たちを集めて身振り手振り交えながら彼らに何か言っている。すると、弓を持っていた魔物を残して他の魔物たちは揃ってどこかへ行く。
「まさか友達に会うなんてびっくりだよ~ほんとにほんとに」
「俺だってびっくりだよ。まさか魔物退治に来て友達に会うなんてさ」
残った魔物の様子を見ながら、恐る恐るフランツに近づく。
「お前、魔物と会話できてるみたいだけど魔物の言葉が分かるのか?」
「いや、全然~」
あっさりと否定した。しかし、どう見ても魔物と意思疎通出来ていた。一体どうやって、そもそも言葉があるのか。謎は尽きない。
「でも、さっき魔物と話してたし、魔物の方も言う事聞いてたじゃん!」
「ストップストップ~! 魔物ってこの人たちの事? 確かに僕らとはちょっと違うけどそれは酷いんじゃない?」
フランツは魔物たちを人間だと思っているようだ。気になる事が多過ぎて何から聞くべきか、貝紫は頭の中で整理する。
「とりあえず、この人たちの言葉は分からないのにどうして意思疎通できているのか」
「簡単だよ~音程が違うんだ。はいの時は同じ音程で頷いて、違う時は半音上げて首を振ればいいんだ~後は~……」
「待ってください。音程が違うって、それだけで魔物たち……彼らと会話を?」
「聴いてみればちゃんと分かるよお兄さん~ええと、うが うがが ぐわっぐわっ」
「がるる」
貝紫たちには殆どただの唸り声にしか聞こえないが、魔物たちも独自の言語を持って会話してるらしい。
「主、私には全然違いが分かりませんが、これもグラマトンの力と関係が……?」
「いや、これはフランツの持つ絶対音感で音を聴き分けてるんだと思う。俺にも全然分からないし」
くるっとフランツたちは振り向いて貝紫たちを手招きする。
「おいでよ~そろそろカイたちが敵じゃないと伝わってるだろうし、僕らの仲間たちの所へ~」




