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美少年の声は世界を救うようです  作者: 八田D子
フランツとハーラの交響曲 前編
79/114

5節目

 魔物の斥候に出会った翌日、規模の大きい野営地跡を見つけた。シノーメが調べて見て回る。

「人の物にしては火の始末や物の扱いがずさんだ。訓練された兵ならばこんな事はしない」

「そうすると、やっぱり魔物が作ったのか?」

「恐らくそうでしょう。原始的とはいえ囮や武器を使い、かなり知能があると見えます」

 この大きさならどれくらいの数になるのか、素人の貝紫でも十体以上は余裕で入る大きさだ。魔物の群れは相当な数になるだろう。

「気を付けて下さい。まだ火がくすぶっています。まだこの近くに……」

 言っている途中で何かに気が付いてシノーメが貝紫を力づくで引きずり倒す。その頭上を何かが空気を切りながら飛んで行った。

「伏せて! 弓を使う奴がいます!」

 シノーメが叫ぶ。矢の飛んできた方角を見ると、既に何体かの魔物がこちらに向かってくるのが見えた。

「待ち伏せか。まだどこかに潜んでる奴がいるかもしれません。主も気を付けて!」

 見えるだけでも五体、さらに見えない距離から弓を射るのが少なくとも一体。完全に相手の罠にはまってしまった。

シノーメが向かってくる魔物の攻撃を弾き、受け流す。三体くらいまでなら十分対応できる実力を持っているが、矢を射る魔物の存在が気になっているようで、目先の魔物に集中できていない。三体目の魔物の攻撃を受け流した直後、再び矢が飛んできて、体勢を崩しながらシノーメは回避する。

 仲間が近くにいるのに偶然か、それとも相当な腕前を持っているのか、仲間の魔物たちの間をすり抜けて確実にシノーメに当たるように射ってきた。地面に倒れ込むシノーメに、残りの二体の魔物がまだこちらに向かってくる。

「主!」

 シノーメの言葉に反応して貝紫はグラマトンの力を唱える。何の力を求めているかは言われなくても分かっていた。

「ヴォイ・ド ア シュマ クァバー!」

 聖域の聖獣の時に使ったグラマトンだ。この力を受けた者は超人的な身体能力を得る。この力を受けたシノーメは目にもとまらぬ速さで立ち上がり、残りの魔物を相手にならないといったように片手で払い除ける。それ程の力を発揮できる驚異のグラマトンだ。例え魔物でも今のシノーメにかなう相手はいないだろう。

 そして三度目の矢が飛んでくる。それをなんと素手で掴んで止めてしまった。見ていた貝紫の方が驚いた。

「主、行きましょう。矢はあっちから飛んできました」

「ああ……」

 もはや怖い物はないといったようにずんずんと矢が飛んできた方へと向かっていく。すると、向かう先にあった茂みから魔物が一体姿を見せる。既に次の矢を構えていたが、流石に射った矢を掴んで止めるとは思わなかったようで、構えたままこちらを睨みつける。

「ストップ! 参った参った。こちらの負けだよ!」

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