4節目
相手の魔物は3体、いびつな三角形の様な陣形で貝紫とシノーメを取り囲んでいる。魔物はどれも同じ人型で、頭蓋骨を思わせるような不気味にくぼんだ目、突起のなく穴だけの鼻、色黒の肌に口から飛び出した二本の牙が、人間との明確な違いを表していた。
「ぐろろろろ!」
唸り声を上げながら他の二体が駆け寄ってくる。その手には最初に攻撃してきた魔物と同じこん棒を持っている。
「ふん!」
シノーメが最初の魔物を掴むと、向かってくる魔物たちに向かって投げ捨てる。これで相手の方が多数でも、投げた魔物と向かってくる魔物の一体を同時に無力化できる。残った魔物も一対一ならシノーメは負けない。
振り下ろされたこん棒の一撃を余裕で受け止める。今まで相手をしてきた魔物に比べれば、動きも腕力も人間とそう変わらなかった。がら空きの動体を蹴りつけてもみ合ってる二体に向けてぶつける。
「ぐわ!」
三体の魔物はもがき合いながら下方へ転がり落ちていく。
「よぉし、後は俺の……」
「主、少々お待ちください」
グラマトンの力を使おうとしたところで、シノーメに制止される。
そのまま、魔物の様子を見ていると三体の魔物は起き上がるとすぐに逃げ出し始めた。
「あれは単なる斥候でしょう。あくまで様子見のための囮、こちらの手を必要以上に見せる必要はありません」
シノーメが魔物の背を見ながらそう説明する。結局、グラマトンを披露する機会はなかった。
「なんだ、残念だな」
「次に襲って来た時は、それが本隊でしょう。その時に主の力を使うべきです」
本人は自信ないがなんだかんだ言って、元騎士であるシノーメの戦いに関する腕はかなりのものだ。素直に言う事を聞くことにする。
「しかし、魔物たちも今度はもっと戦略を考えてくるはず。しばらくは警戒して群れの本体を探しましょう。2、3日くらいなら私も寝ずの番が出来るので、その間に群れを見つけて叩きましょう」
そう言うと、再び野営の準備をし始めた。まるで何事もなかったかのように冷静だ。本当ならば、相当な実力者になれるはずであっただろうに、相手を傷つける事が出来ないばかりに不当な扱いを受けてきた。しかし、守る事しかできないからこそ、貝紫はシノーメを従者にしたのだから運命とは分からない物である。
その日はこれ以上魔物の襲撃もなく、貝紫はシノーメのお陰で特に問題もなく過ごすことが出来た。斥候がいるという事は群れの本体もすぐ近くにいるはず。翌日中に見つけ出してその時はグラマトンの力で退治してやろうと貝紫は思った。




