6節目
「だから今回俺が永世王に会いに来たのは、聖教国と和睦を結んで早々に戦争を止めて欲しいからなんです!」
貝紫がそう言うと、諸侯の一人が手を上げた。
「私は反対します永世王殿! 既に聖都オズマが届く範囲まで戦況は我々に有利! このまま一気に畳みかけて聖都を制圧するべきです!」
「だが、待て。貴公はそう言うが未だにその要所であるリッジ砦を落とせてないではないか」
「何でも一人の少年が魔術らしき怪しげな力を使い、そのせいで攻めあぐねているとか……」
諸侯たちの視線が一斉に集まる。リッジ砦が陥落していないのはロッソが底を守っているからだ。しかし、その事を言うべきか貝紫は悩んだ。グラマトン使いが他にもいる事が知られたらこの会議はより混乱するだろう。
こそこそと諸侯たちが一人また一人と自分の意見を言い始めた。
「少年の言う通りにすべきです。こちらに有利な状況で和睦を結べるのではありませんか?」
「その防衛の要である御使いの少年が今はこちらにいるのだ。今こそ攻めるべきです」
「そもそも本当にこの少年が御使いか? ゼンカー侯爵は誑かされただけでは?」
「この少年を送り込んだこと自体が聖教国の企みかもしれませんぞ」
貝紫をよそに、諸侯たちは自分たちの考えを一方的にまくしたてる。このままでは収拾がつかないと思って、貝紫が発言しようとしたその時、永世王が再び手を上げた。
それに気づいた諸侯たちは再び沈黙する。
「貴殿の考えはしかと理解した。しかし、我々は聖教国と和睦をするつもりはない」
それが永世王の答えだった。
「これは信と義の戦である。権威を振りかざす教皇の横暴に我々は立ち上がったのだ。こちらから妥協を申し出る様な事はないと考えて貰おう」
やはり駄目なのかと思ったが永世王は続ける。
「だが、これが聖教国の、教皇自らの正式な申し出であれば、考えなくもない。以上だ」
そう言って永世王は口を閉じた。これ以上言う事は何もない、そういう態度だ。まだ納得のいってない諸侯たちがぶつぶつと何かつぶやいていたが、永世王の言った事に直接物申す度胸は誰もないようだ。
「分かりました。俺は……私はこれで失礼します」
貝紫もまだ言いたいことはたくさんあったが、この場でこれ以上の交渉は無用だと感じ、円卓の間を後にした。少なくとも、永世王の方にはまだ可能性があることが分かった。問題は、どうやって教皇に申し出を出させるかという事だ。シノーメと相談して今後の動向を模索することに決めた。




