4節目
アロンズ永世王はイリンカからさらに西、ブッキラ城という場所にいる事が分かった。諸侯同盟の各地から永世王を支持する王侯貴族が集まるこの城は要所として数年かけて増築され、立派な城塞へと変貌したという。その証拠に、城だけでなく城下町も聖教国のオズマにも負けない程賑わっており、人だけでなく文化や品物も様々な地域の物が集まっていた。
オズマとの違いは、騎士のような武芸に秀でた者に向けた上質な武具や防具を扱う店が多い事、規模の割に装飾自体は質素で堅実な造りの建物が多いことが目に入った。
「何だか街中なのに緊張するな。人が多いけど、みんなしかめっ面というか……」
「恐らく各地から集まった騎士団や傭兵たちなのでしょう。同じ同盟と言えど、武功を競い合う相手ですので、ちょっとしたことで諍いを起こすかもしれません。あまり関わり合いにならない方がいいでしょう」
味方同士と言えど、それぞれみんな同じ考えで仲が良いとは限らないことか。聖教国でさえ枢機卿の間で考えが異なるのだから、様々な人間の集まりである諸侯同盟はさらに細かく派閥争いの様なものがあるのかもしれない。これらをまとめ上げているアロンズ永世王もきっと大変苦労をしているのだろうなと貝紫は思った。
「でも、争いを止めるために永世王には協力をしてもらわなきゃ」
ゼンカー侯爵からの親書を頼りに、ブッキラ城へと二人は赴いた。
城はオズマの物とはだいぶ異なり、塔のように高く、そして要塞のように大きく重厚だった。大きさだけならオズマの大聖堂を越える。ここなら数多くの騎士団や要人が集まるにふさわしい。
「ゼンカー侯爵からの招待で来ました。我々も城の中に」
門番へ証書を渡すと、入城の許可が下りて中にはいる事が出来た。聖教国では時間がかかったが、アロンズ永世王はすぐにでも会いたいとやってきた部下から伝えられた。
「主、私は今回も外で待っております」
「話が早くて助かるけど、こういうのはいつも緊張するな」
兵士によって貝紫は城の広間へと案内された。中央に据えられた大きな円卓には各地から集まってきたであろう王侯貴族が並び、こちらを品定めするように睨んでいる。彼らの中心で鋭い眼光を向けている者がいた。全身から彼がアロンズ永世王だろう。そう確信させる人柄、オーラの様なものを貝紫はすぐに感じた
「侯爵の親書を読んだ。少年、貴殿がグラマトンを扱う御使いだと」
ずばり率直に永世王が尋ねる。堂々とした態度は聖教国の枢機卿たちの様な物々しい雰囲気とは違うが、その威圧感はあの女教皇以上だ。
「はい俺……私がその御使いです」
貝紫がそう答えると、周囲の王族たちが騒ぎ始める。予言や御使いという単語が貝紫にも聴こえてくる。聖教国で聞いた予言の話は諸侯同盟にも伝わっているようだ。




