2節目
「今の諸侯同盟を率いているアロンズ王ってどんな人なんだ?」
道すがら貝紫はシノーメに尋ねた。彼もかつて諸侯同盟の一員だったから、これから会いに行く人物の人となりを知っているはずだ。
「私はアロンズ王に直接対面したことはありませんが、遠目に何度もその顔を拝見したことはあります。それだけでも威厳があってなんと凛々しいかと思うお方でしたよ。それに兵を大事にし、時には自ら戦場に立つことも珍しくはありませんでした。」
教皇から内政干渉を受けた際、アロンズ王家は教皇の配下ではないとそれを拒んだため、教皇から破門を言い渡された。しかし、既に周囲の王侯貴族から支持を受けていた王家は彼らと同盟を結び、諸侯同盟という聖教国に対立する国へとまとめ上げた。
「そして彼は、王権は神から直接与えられるものであり、何人もその権威を犯すことはできないという意味合いを込め、自らを永世王と名乗り始めたのです」
聞くだけでも凄そうな人物だ。果たして本当に説得できるか。貝紫はまた不安になってきた。
「……マス」
「うん? シノーメ、何か言ったか?」
「いえ、私は何も……」
突如聞こえてきた声は聞き覚えがあった。その方向へふり向くと驚いたことに、空間に顔が入るくらいの穴が開いていた。その穴の中はどこかの室内に繋がっていた。
「何だこりゃ」
大体の不思議な物は見慣れていたが、目の前にあるのはまたこれまで見てきた物とは全く別の物だった。覗き込んだ瞬間、向こうの穴からもひょこっと見慣れた顔が現れた。聖教国のリッジ砦にいるはずのロッソの顔が、空間の穴から現れたのだ。
「「うわっ!」」
貝紫は驚きの声を上げて後ずさりしたがそれは向こうも同じだった。恐る恐るまた覗き込むとやはり、それはロッソだった。
「ロッソ、何でこんな……諸侯同盟にいるんだ?」
「やっぱりカイか! こんな風に会えるとは思わなかったよ」
話を聞くと、ロッソがローレン卿から教えてもらったグラマトンを試しに唱えてみたという。ローレン卿は女教皇の考えには否定的で、魔法大学で研究しているグラマトンの言葉の一部を彼に教えてくれた。
「ヴォイ・ド マス(我が 目)と唱えてみたらこうやって空間に穴が開いて、カイのいる所に繋がったわけ。どうやらこんな風に遠くの土地と繋がる空間が開くみたいだな」
「これがあれば、いつでも連絡とかできるんじゃないか? いい物を使えるようになったじゃんか」
話しているとじわじわと空間に開いた穴が小さくなっていく。
「あんまり長時間は繋がれないみたいだな。でも、何かあったらいつでも唱えて連絡してくれ。じゃあな!」
ロッソが別れの言葉を言うのと同時に空間の穴は何事もなかったかのように閉じ切った。




