6節目
「どうするシノーメ?」
「まずは近づいてみて様子を見ましょう。主は私の背後に」
「二人だけで行くつもりか? 言っておくが、あいつは私と部下数人がかりで戦っても手が付けられなかったほどの魔物だぞ」
「まあ見てなって、俺たちがどんなものかなって」
二人は魔物にどんどん近づく。近づくにつれてその魔物の大きさが分かった。4,5メートルはありそうだ。沼地にいた魔術師の泥人形も同じくらいだった。それに比べたら一匹しかいないこの魔物の方が余裕だと貝紫はたかをくくっていた。あと数メートルという距離まで近づくと、魔物もようやく敵と認識したのか、地面を踏み鳴らしながら近づいてくる。
「いくぞ、俺のグラマトンで……」
「待ってください主、聖域の森があの魔物の背後にあります。あまり破壊的なグラマトンは使わない方がいいでしょう」
シノーメに言われてはっと気づいた。強力なグラマトンは周囲にも被害を与える。魔物を倒すため、森に被害を出してはいけない。
「いけね! じゃあこのグラマトンでどうだ?」
周りに被害は出さず、相手だけを無力化するグラマトンを唱える。
「サン ノリ クァバー アム オーディ」
その声は後方で見ているルーシーにも届いた。グラマトンの存在を知らない彼女にとっては、聞きなれない貝紫の言葉を魔法の詠唱か何かだと思った。グラマトンの力で魔物はその場に縛られた様に動きが止まり、身動きできなくなった。
「よし、でもこれだけじゃ駄目だな。森に当たらない位置から攻撃してみるか……」
森を背にしようと貝紫が回り込もうとすると、突然魔物が耳をつんざくような雄たけびを上げる。
「ごあああああ!」
すると、グラマトンで身動きできないはずの魔物が急に動き出して、貝紫に襲い掛かった。
「主!」
シノーメがさっと間に割り込む。そこに魔物の大きな拳が振り回されてくる。
「うぐっ!」
盾だけでなく全身を使ってその拳を受け止めるが、それだけでは威力を防ぎきれずシノーメは膝をつく。
「シノーメ!」
「主逃げて!」
続けざまに魔物はシノーメごと貝紫を吹っ飛ばそうと、さらに一撃殴りつけようとする。その一撃を今度は受け流そうとするが、あまりの威力に受け流しきれず、盾を持った腕がありえない方向に曲がる。
「ごあっ!」
魔物は邪魔だと言わんばかりに腕を振り払う。既に重傷なシノーメは守りの態勢に入る間もなく軽々とその身を弾き飛ばされた。




