3節目
イリンカ南の森へは徒歩でもすぐについた。
「あそこが騎士たちの駐屯地のようです。侯爵からいただいた書簡もあるし、すぐに受け入れてくれるでしょう」
遠目に見える駐屯地では侯爵の部下であろう兵たちが何人か見える。その内の馬に乗っていた騎士らしき兵がこちらに気づくと、馬を駆けて向かってくる。
「おや、既に我々が来ることが伝わっていたかな?」
しかし、何か様子がおかしい。近づいてくる騎士はさらに馬のスピードを上げて向かってくる。
「主、私から離れて!」
シノーメが横に飛び出すと、馬に乗った騎士は彼に向かって剣を抜いた。明らかにシノーメの事を狙っている。その殺意に気が付いたシノーメが、盾で振り下ろされた剣を受け流しながら飛び退く。
「ちょっと待ってくれ! 俺たちは敵じゃなくて……」
貝紫が慌てて書簡を取り出そうとするが、向こうはそれよりも早く馬から飛び降りてシノーメに剣を振り下ろす。今度は盾で受け止めるとシノーメと兵は膠着状態になった。
「何故私に殺気を向ける?」
「己のした事を忘れたわけではあるまいシノーメ・セヴァン」
相手の声を聞いた瞬間、シノーメは驚いて後ろに飛び退いた。相手の騎士が兜を脱ぐと、貝紫は攻撃してきた人物が女性であることに気が付いた。
「この恥さらしめ、よくのうのうと私の前に姿を晒すことが出来たな」
女性騎士は剣をシノーメに向けながらじりじりと近づく。その二人の間に貝紫が割って入り、侯爵からの書簡を彼女の前にかざす。
「待ってくれ! 俺たちは森にいる魔物退治をゼンカー侯爵から引き受けて来た! 悪者でも何でもない!」
「主……離れて下さい危険です」
「主? 今はその少年相手に主従ごっこでもしているのか?」
女性騎士は二人を見比べると鼻で笑った。
「ごっこなんかじゃない! 大体あんたは何者なんだ? シノーメの事を知ってるみたいに……!」
「そいつから何も聞いてないのか? 私の名前はルーシー・セヴァン」
女性騎士はシノーメと同じ姓名を名乗った。彼女の名前を聞いて貝紫もはっと気づく。
「戦から逃げたセヴァン家の恥さらし、シノーメ・セヴァンの妹だ」




