2節目
「それで、汝の様な少年が、御使いだというのか?」
ゼンカー侯爵はじろじろと貝紫の事を品定めするように、足元から頭まで見定めていく。諸侯同盟では統治者自ら民から直接要求を聞くのが普通だという。その機会に便乗して、すんなり面会することはできたが、やはり突然御使いだと言ってもすぐには信じてもらえないようだ。それに、ゼンカー侯爵は一目見て少し高圧的で、疑い深そうな人間という印象を貝紫は受けた。
「お疑いになられるなら、今この場でその力を披露することも可能ですが……」
「よい、その力があの怪しげな魔法とどう違うかは、こちらにはそう簡単に判断することは出来ん」
やはり、諸侯同盟では超常的な力はあまり良い印象はないみたいだ。それが殊更に、彼の猜疑心を強めているのだろう。
「本来なら戦場で直接その力を見るのが手っ取り早いのだが……」
王の言葉に貝紫は警戒する。もしかしたら、リッジ砦への襲撃をやらされるかもしれない。そうなれば、せっかく送り出してくれたロッソの期待を裏切ることになる。すぐに断ろうと思っていたが、王の口からは思っていたのとは違う言葉が返ってきた。
「生憎今は戦争だけでなく他にも問題が山積みで、我自身多忙なのだ。汝がその手助けをしてくれるなら、グラマトンの力だろうが魔法だろうが信用してやってもよいぞ」
貝紫にとってはそっちの方が嬉しかった。直接戦争に関わったり争いに加わる物でなければ、十分にその力を奮ってもいいのだ。
「どんな問題でもすぐに解決して見せます! どうぞ何なりとおっしゃってください!」
ゼンカー侯爵は貝紫の返事を聞いて、ニヤリと笑った。
「よろしいならば頼もう。今一番頭を抱えている問題は領地に出る魔物の事なのだ……」
侯爵の言葉によると、領内の南にある森に凶悪な魔物が現れて困ってるという。部下の騎士たちを派遣したが彼らにも手が出せない程強力なため、グラマトンの力でその魔物を退治して見せよ。というのが依頼だった。
「魔物が出て民も怖がっておる。見事魔物を退治してくれたならば、アロンズ殿への謁見の件、考えてやらんでもない」
魔物退治であれば存分にグラマトンの力を使える。貝紫はすっかりやる気になってその依頼を承った。魔物を見張るために兵を駐屯させている場所があるため、まずはそこへ向かうように二人は指示を受けると、すぐにイリンカを出て南に向かった。侯爵の言った通り、その森は城からすぐ近くにあり、すぐに解決すればその日の内に王へ報告が出来そうだった。
「魔物退治か、やっぱり諸侯同盟でも魔物に困ってるんだな」
「騎士として箔をつけるために自ら退治に赴く者もいるほどです。しかし主、相手は諸侯同盟の精強な兵でも手こずる程の強力な魔物。油断せずに行きましょう」
道中、二人はそんな会話をしながら駐屯地へと向かった。そこで意外な出会いがあるとは二人はまだ知らなかった。




