10節目
「入れろ! 我々はオズマから来た兵団である。リッジ砦の増援として参った!」
貝紫たちが出発した直後、聖都オズマから来た教皇の送った軍勢がリッジ砦の城門前にやってきていた。
「増援なぞ伝令すら寄越さず、こちらは何も聞いていない! 諸侯同盟の罠かもしれん集団をやすやすと入れられるものか!」
貝紫たちの行方を晦ます時間稼ぎに、同じような問答を何度もしてリッジ砦に侵入させなかった。両者ともに険悪な空気が流れている。
「まだ砦にはいる事は出来ぬのか?」
兵団を率いているのは意外にもドルクア将軍ではなく最高顧問のローレン卿だった。いつまで経っても進まぬやり取りにしびれを切らし、自ら門前にやってきた。
「私はオズマの魔法大学最高顧問のハル・ローレンである。この紋章がその証拠だ。中に入れよ!」
従士に持たせた旗を掲げてこれ見よがしに見せる。それは間違いなくオズマにある魔法大学の校章だった。枢機卿の証でもこの校章は、それだけで権威を証明できる。流石にこれ以上ごねるのは無理と判断し、リッジ砦の兵たちが声を上げる。
「枢機卿が直々にいらっしゃるとは存じ上げませんでした。今城門を開けます!」
ローレン卿を先頭にぞろぞろとリッジ砦に兵たちが入っていく。仲間の砦だというのにピリピリとした剣呑な空気を、両者の兵はお互いに感じていた。
「この砦に、御使いの少年がいると聞いて参上した。その者はどちらにいる?」
「僕を呼んだか。枢機卿とやらのお偉いさん」
ゲオルグを従えたロッソが姿を見せる。にらみつける様な表情は明らかに不信感をローレン卿に見せていた。
「あんたたちが御使いと呼ぶ少年は、グラマトンの力を使える僕の事だと思うが」
貝紫がいない事は薄々感じていたが、やはりグラマトン使いは複数人いる事をローレン卿は理解した。
「急に訪れて申し訳ない。教皇の命によってリッジ砦の増援として参りました。しかし……」
ローレン卿は馬から降りると、ロッソに深々と頭を下げた。これにはロッソだけでなく周りの兵たちも驚いた。聖教国で教皇に次ぐ権力を持つ枢機卿が頭を下げているのだ。
「聖都オズマに続く要所でありながら今まで大した支援も出来ず、枢機卿としても恥じるばかり。しかし、それほどまでに今の聖教国は疲弊していると考えていただきたい」
「それで、今になって増援としてやってきたと?」
「それとは別に、実はもう一つ大事な理由があって最高顧問たる私が参りました。そのグラマトンの力についてです」
グラマトンの力を戦争に利用しようという事だとロッソは思った。しかし、わざわざそれを自分に伝えても聖教国への不信感を強めるだけではないだろうか? なぜそこまでローレン卿が話したのか、その理由を知りたかった。
「その力は人間にとって持つには強すぎる力。しかし同時に、研究者としてその力の真理を解き明かしたくもあるのです」
「つまり、何が言いたいのか?」




