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美少年の声は世界を救うようです  作者: 八田D子
聖都オズマの狂想曲 後編
52/114

7節目

 オズマでは再び枢機卿と教皇が集まっていた。今回は枢機卿も全員集まっている。だが、そのうちの一人はまたも己の席には座らず、尋問される罪人のように教皇と他の枢機卿に囲まれている。

「これより傾聴審問官長キュニゲオス卿の審問を始める」

 女教皇アンデクスが重々しく宣告する。それもそのはずで、本来傾聴審問官は聖主国において教皇に盾突いたり裏切りを企てる者を見つけ出す役割をもっている。その審問官が重篤な裏切り行為をしたとあっては、教皇の権威が揺るぎかねない。

「キュニゲオス卿、何故御使いである少年とその従者二人を逃がす手伝いをしたのだ?」

「主曰く、助くべき人を助けよ。他者を愛し……」

「ええい、そのまどろっこしい話し方はやめよ!」

 ドルクア将軍が怒鳴りつける。最初に尋問したときからキュニゲオス卿はこのような訓示の引用ばかりしか言わないため、その真意を計り損ねていた。

「落ち着いてくださいドルクア将軍、キュニゲオス卿は異端者を告発する傾聴審問官の長。そのため異端者に悟られぬよう、このような話し方しかできぬのです」

「しかし今は、その彼が教皇に歯向かうような事をしたのでしょう?」

 レリク卿の言葉に、ローレン卿が返答する。教皇の意に反して貝紫たちを逃がした彼の行動は立派な裏切り行為だ。その理由を本人の口から聞くのがこの審問の目的だった。

「キュニゲオス卿、率直に尋ねるが教皇である私と、御使いの少年どちらを信用しているのだ?」

 アンデクスの問いに、少し間が空いてキュニゲオス卿は答えた。

「御使いは言った、聖主の名の下には人々は平等であり、皆主の子であると。教皇の意思は御使いの導きにより決定され、また誤ることはない」

「これは訓示の37節目と55節目ですな」

 ジョイサムリバー卿が失った頭頂部の頭髪を気にしながら呟いた。

「訓示の両方の意味を解くと、教皇より御使いの方を重んじているという意味でよろしいいのかしらキュニゲオス卿」

 キュニゲオス卿は女教皇アンデクスをじっと見つめた後、小さなため息をついた。

「富める者が優れたるは富めるからに非ず、富を得た行動と理性にある」

 キュニゲオス卿が続ける。

「川の流れをせき止めた王は自らの無謀に気づかず、水は濁り、やがて濁流となって王を呑み込む……」

「訓示の112節目と184節目……」

「言わずともわかる。キュニゲオス卿、要するに貴方は教皇である私の言動が、その範疇を越えていると言いたいのですね」

「賢者は自らの行動を見て、愚者は他者の行動を見る……」

 議会の間に緊張の糸が張り詰める。審問官長は教皇を諫めているのだ。他の枢機卿が教皇に従う中、彼一人は確固たる意志を持って、そのやり方に異を唱えている。

「なるほど、あなたの考えはよくわかりましたキュニゲオス卿」

 教皇アンデクスが無慈悲にも告げる。

「あなたの傾聴審問官長の任を解きます。そしてオズマの地下牢で20年の禁固刑に処します」

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