4節目
「これからの事ですが、オズマを出たらどうしますか?」
貝紫とシノーメは薄暗い下水道の一角で、これからの事について考えていた。例えオズマを出たところで、恐らくどこにいようと貝紫を捕まえるべく聖教国は兵を送り続けてくるだろう。例えグラマトンの力があっても、いずれ疲弊して捕縛されることは容易に考えられた。
「うん、そのことだけど、一つ案がある」
「それはどんなもので?」
「聖教国に戦争を止める気がないなら、今度は諸侯同盟の方に行ってその指導者に会う」
諸侯同盟は教義的には御使いそのものを神の代理人として扱っている。ならば、自分の話に従ってくれる可能性は高い、と貝紫は思っている。
「それは本気ですか?」
「本気だよ」
シノーメにとってはかつての所属先で苦い過去があった。それでも主である貝紫が行くと言うのならついていくのが従者としての責務だ。
「それならば、諸侯同盟との領地にここから一番近いのはリッジ砦です。あそこまで行ければ主とおなじグラマトンの使い手であるロッソと言うお方の力も借りられるし、領地に入ってしまえば聖教国もそう簡単には追いかけてこれない」
思えば他に道はない。同じグラマトンの使い手であるロッソを危険にさらすことになる。聖教国はグラマトンの使い手を利用しようとしているのだから。
「ロッソにも話を伝えれば、そう簡単には聖教国に力を貸すようなことはしないと思う。あいつにとってリッジ砦のみんなの方が大切だから」
「そうと決まれば、またリッジ砦に向かう事にしましょう。後はここをどうやって出るか……」
オズマを出るにはどうするか再び考え込む二人。この下水道から外に出れる保証はない。老人にそれを聞いてみようと思った時、突然寝ていた老人が立ち上がり叫び出す。
「嵐がやってくる! それは麦畑を蹂躙し、貴方たちに牙剥くだろう!」
「何が言いたいんだろう?」
「主、いくつもの足音が聞こえてきます。どうやらここにいる事がばれたようです」
通路から数多の兵がなだれ込んできた。乱暴にも他の物乞いたちに武器を突きつける。怒声と悲鳴が下水道内に響いた。
「行きましょう主! 奴らの狙いは我々です!」
「行くって言ってもどこから逃げれば……」
貝紫は老人がある通路でこちらに手招きしているのが見えた。ここから逃げられるという事だろう。
「居たぞ! あの少年と従者だ!」
それとほぼ同時に二人を見つける声が聞こえた。振り返ることもせず、貝紫たちは老人の案内する通路へと飛び込み、さらに奥へと逃げだした。
「従者はどうなってもいいが、少年の方は生かして連れてくるのだ! 行け!」
ドルクア将軍自らもやってきていて、兵士たちに命令を飛ばす。




