10節目
「こんなにグラマトンを使える子供がどうして……」
貝紫とシノーメが疑問を呟くと、場違いな笑い声が響いた。
「はははは素晴らしい! これこそ聖教国の秘密兵器、グラマトン使いの少年たちで構成された聖歌隊!」
声の主はジョイサムリバー卿だった。
「我々だってこの神の言語グラマトンの研究を長年しているのだよ。それを使えるのは少年しかいないことも知っている。だから時間をかけて、その才能のある少年を集め、魔法使いたちの力も借り、グラマトンを使えるように様々な秘術を施したのだ!」
よく見れば、全員が同じ顔、同じ身長、同じ格好をしている。まるで作られた人形のようだ。
「いずれは諸侯同盟との戦いに使うつもりでいたが、その前に本物にどれほど匹敵するか試したかったところだ。さあ、見せてやりなさいその力を!」
ローレン卿が手を上げると、聖歌隊の少年たちが陣形を形作る。腕の上げ方や形で指示を出しているのだろう。まるで指揮者だ。
「ギョタン」
「ギョタン」
「ギョタン」
輪唱するように少年たちがグラマトンを唱えると、眼に見えるほどの空間の歪みが生じて貝紫とシノーメに襲い掛かる。かまいたちや真空刃のように見えない刃が、前面に立つシノーメの全身を切りつける。
「うぐっ」
「大丈夫かシノーメ!」
「私はまだ大丈夫です。ですが、その前に盾が今の一瞬で傷だらけです。恐らく次は持ちません」
防戦一方の二人を見て、ジョイサムリバー卿は勝利を確信した様に笑う。
「大人しく我々に降れば命だけは助けてあげますよ。御使い殿は悪いようにはしません。研究の手伝いをしていただくのと、兵たちの士気を上げていただくだけですので、ぐふふ……」
「リバー卿、これは貴方の手柄ではなく、魔法大学と私の研究と実験の成果ですが」
「わかっている。だが、信徒の少年たちを集めたのは私だぞ! これだけの数を集めるのにどれほど金と苦労を掛けたか……!」
目の前で口論する枢機卿の勝手な言葉に貝紫の怒りに火が付いた。
「許せない……俺はお前たちのことが許せない!」
「だからどうだって言うのですか? そういうならば反撃の一つもしてみればいいのですよ!」
ローレン卿の指揮で再び聖歌隊が輪唱を始める。グラマトンで作られた空気の刃が襲い掛かる。
「ロッソのグラマトンに比べれば、この程度の力は比較にもならない! 本当の神の御業を見せてやる!」




