7節目
「猊下、この者は子供ですぞ! 諸侯同盟も子供の言うことなど真に受けるとは思いませぬ!」
「俺が子供だから駄目だって? それはあんたがそう思ってるからだろ!」
ドルクア将軍の言葉に思わず頭にきて貝紫が叫んだ。これまでの話を聞いてなお先入観で話をするドルクア将軍の態度に我慢ならなかった。
「俺は南のミッカジ村からオズマに来るまで旅をしてきた。そしてこの聖教国の現状をこの目で見てきたんだ。誰もがこの戦争のせいで疲弊してるし、それを利用して悪いことをしている奴らも見てきた。こんな戦争を続けてるよりもっと大事なことがあるはずでしょう!」
貝紫の言葉にドルクア将軍は何も返すことが出来なかった。
「なんと凛々しく美しい声か……聴いてるとどんどん引き込まれてしまいますなぁ」
ジョイサムリバー卿が思わず言葉をつぶやく。ローレン卿も何か思惑があるのか、僅かに口角を上げている。
「まずは落ち着いてください御使い殿。あなたの言い分はよくわかりました」
ここでついに女教皇アンデクスが口を開いた。どうやら彼女もついに考えが決まったようだった。
「御使い殿、あなたの言う通り諸侯同盟との和平交渉の場を設ける事にしましょう」
「本当ですか!」
「しかし……」
アンデクスが続ける。
「現状、今すぐ和平交渉をしたところで聖教国にとって利がありません。なので……」
女教皇は信じられないことを言った。
「そのグラマトンの力で戦況をこちらの有利な状況にしてから、和平交渉の場を設ける事にしましょう」
「そんな……話を聞いていたんですか! 自分はどちらの側にもつかないと……」
「それならば結構。貴方の存在は聖教国には必要がありません。聖教国にとって、聖主の代理人は教皇である私以外には存在してはならないのですから」
貝紫には信じられなかった。結局女教皇も自分の事しか考えていない。沼地で会ったあの魔術師レンデルと変わらなかった。
「傾聴審問官から話は聞いております。グラマトンの使い手は複数いると……あなたが御使いである証拠はどこにもないのですよ」
貝紫はぎくりとした。自分の他にグラマトンを使える少年、友人のロッソがいることがばれている。
「あなたがこちらの力になる事を断るなら結構。我々はもう一人のグラマトン使いに頼むだけですから」
ロッソが直接、そう簡単に教皇たちに力を貸すとは思わない。だが、女教皇には何か手段があるような口ぶりだ。魔術師の事を思い出す。そいつは人を操る魔法を使えた。ロッソを魔法で洗脳するなど手段を持っているに違いない。
「そんな事、絶対にさせないぞ! それに例えあんたたちが頼んでも、そう簡単に力を貸すはずがない!」
「そうですか。それならば……」
女教皇は視線を貝紫からローレン卿に移して、貝紫には気づかないよう目配せをする。ローレン卿は静かにうなずいた。
「我々のグラマトン使い達に頼みましょう」




