4節目
「教皇との面談の許可をいただければ結構です。直接大聖堂へ赴きますので」
教皇へ取り次ぐ書簡を王から渡され、これで大聖堂へ向かうことができる。王は一応護衛を出すと言ったが、それをシノーメが丁寧に拒否し、二人は直接オズマの大聖堂へと向かうことにした。聖都オズマの最重要施設らしく、先ほどの王がいた城が、地味で無骨な様相だったのに比べて、壁には緻密に彫られた彫刻、豪華な装飾で飾られた大理石の柱と、比べ物にならないほど派手で美しく彩られていた。
「主こちらへ、巡礼者や魔術大学の生徒と言った普通の人間では入れない区域へ案内していただきましょう」
大聖堂の儀仗兵と言葉を交わし、王から受け取った書簡を渡すと、そのまま教皇と枢機卿のいる議会へと案内される。それをシノーメが貝紫を導いていく。彼がこんなにも手際のよい従者で良かったと貝紫は心からそう思った。奥へ進むにつれて人の数もどんどん少なくなり、喧騒から静寂の空間へと移り変わっていった。
「教皇と枢機卿がこの先の協議会でお待ちしております」
案内者が背の高い重々しい扉の前で足を止めた。二人が入ろうとしたとき、兵は言った。
「ここから先はお付きの者は入れません。面談が終わるまで、別室でお待ちいただきます」
「それならば仕方ない。主、どうかお気をつけて行ってください」
シノーメが付いてこれないと分かると、途端に心細くなる貝紫だったが、少しの後、意を決して扉の奥へと進んで行く。
協議会の中は少し進むと円形の行き止まりになっており、上部にはテラスの様な空間が6つ並んでいた。部屋には壁と床を分かつように水路が張り巡らせられており、しんと静まり返った部屋の中では水の流れる音だけが聞こえていた。貝紫が部屋の中央に立つと、物々しい声が響く。
「レースを開けい。御使い殿の顔が見たい」
どういう仕掛けか分からないが、テラスの様な6つの空間にかけられていたレースの幕が一人でに開いた。それぞれの空間に鎮座する6人の大人たちが、聖教国の指導者である枢機卿と教皇なのだろう。ついに、貝紫はその者たちと対面した。
粗相がないようにとシノーメには昨日の夜から何度も言われていたため、事前に練習した通り片足で跪いて名乗り上げる。
「教皇猊下、枢機卿の方々にお会いできて光栄です。おれ……私が神の言語グラマトンを使える者、松下・ヨハン・貝紫と申します」
貝紫の凛とした声が静まり返った議場に響く。そのままの姿勢で貝紫は不安になりながらも、教皇や枢機卿の返答を待ち続けた。
「お顔を上げて下さい。御使いの方よ。本来ならこちらから出向いて頭を垂れなければならないほどのお方。是非楽にしてください」
そう言われてようやく貝紫は再び顔を見上げ、彼らと対面した。




