2節目
「まずは宿を見つけましょう。はしゃぎ過ぎて迷子にならないようにしてください」
「お金を入れると水が出るって!? まるで自動販売機だ。どういう仕組み何だろうこれは!」
少し離れた街角に、これまでの町や村で見たことのない設備を見つけた貝紫は目を輝かせて駆けて行き、不思議そうに説明を読んでいた。
「まるで聞いていない……」
やれやれとシノーメはため息をつく。近づいて手持ちの貨幣を取り出しながら貝紫に説明を始めた。
「オズマは豊富な湧水や大きな川があるので、水の都とも呼ばれているんですよ。これはお金を入れれば飲み水が出てくる飲水箱です」
「電気もないのにどうやって動いてるんだろう? まさか魔法とか?」
「そんな大した構造じゃありませんよ。入れた貨幣の重さで、中で流れてる水を汲み出しているだけ……」
シノーメが説明をしていると、二人の間を割って横からしなびた腕がすっと差し出された。貝紫が驚いて思わずその主を見ると、ボロボロの服らしきものを着たやせっぽちのみすぼらしい老人だった。よく見るともう一方の腕には肘から先がなかった。
「旅の方、お恵みを」
貝紫が無言でシノーメの方を見る。
「聖都と言ってもこの者の様な貧しい人間はおります。これも戦争が生み出した被害者でしょう」
「可哀そうだから少し分けてやってもいいか?」
「この者の他にもたくさんの貧しい人々がいますよ。その一人一人にも施しを与えるつもりですか? そんなことをする前に争いをなくすのがあなたの使命でしょう」
「でも、こうして目の前にいるのを見たら……」
シノーメは仕方ないといった感じで一枚貨幣を老人に投げ渡した。老人は想像以上の素早さでそれを空中で取ると、貝紫たちの前に跪いた。
「おありがとうございます! あなたたちこそ私にとって救世主! 行く道に幸運があらんことを……」
老人は跪いてぶつぶつと何度も同じ言葉を唱え続ける。
「さあ行きますよ主。同じような者たちが集まってきたら、手持ちのお金がいくらあっても足りませんからね」
「分かったよ。じゃあなおじいさん、元気でな」
二人が見えなくなるまで、老人はその場で頭を垂れたままいつまでも呟き続けていた。




