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美少年の声は世界を救うようです  作者: 八田D子
聖都オズマの狂想曲 前編
35/114

1節目

 街道を行くにつれて行きかう人の数も増えてきた。行商人や郵便配達人、巡礼の信者や旅の人々。そしてついに、貝紫は目的地聖都オズマへと到達した。

「主、見えてきました。城塞の隣に建つ大聖堂が見えるでしょう。あれが聖都オズマです」

「やっと着いたんだ! 長い道のりだった……!」

 最初のミッカジ村から色んな事があった。山賊に捕まってシノーメと出会い、沼地で魔物騒動を起こしている魔術師を退治し、知っている顔に出会って決闘を行った。道中の様々な記憶が、思い出となって貝紫の胸に去来する。

「オズマは広いです。着いたらまずは宿を取って、次の日に城の王と話をすることにしましょう」

「一応、村長が書いてくれた手紙はあるけど、これで俺がグラマトンの使い手だって信じてもらえるかな」

 荷物の中からミッカジ村の村長から書いてもらった手紙を取り出す。仰々しい封蝋がしてあって重要な届け物だと分かるが、山賊たちに開けられてしまった。

「信じてもらえなかったら、その時は直接力を見せればいいのですよ。それに、王に会うのはそこまで重要ではなく儀礼的な物なので、向こうもそこまで時間をかけるようなことはしないでしょう。この地における実際の指導者は王ではないんですから」

「そうなの?」

「王はオズマの運営を任されている責任者にしかすぎません。面倒ですが王に会って、それから大聖堂にいるこの国の指導者たちへ取り次いで貰うのです。聖教国の指導者は大聖堂にいる教皇と何人かの枢機卿ですから」

 貝紫は王よりも偉い存在がこの国にいるなんて貝紫は今まで知らなかった。

「その大聖堂にいる人たちの方が偉いのか?」

「ええ、実際にはですね。宿に着いて一段落したら自分の知ってる範囲でもっと詳しくお話しますよ」

 徐々に近づく聖都オズマへの興奮を隠しきれないまま、貝紫たちは街道を急いだ。

 周囲にある畑や農家の数だけでもミッカジ村とは比べ物にならないほど多く、広い耕作地ではたくさんの作物が実っていた。広がる田園、大きな城塞都市、遠目に見える大きな山脈と合わせてその景色の壮大さに圧倒される。

「シノーメ、あの遠くに見える大きな山は何て言うんだ?」

「あれは聖峰サントロン、伝説によると聖主が一番最初に造られた土地があそこだと言われています。あの山頂から煙が上がる事は聖主がお怒りになっているだとか、凶事の前触れと言われたりします」

「火山なのか? あれだけ大きいんだから噴火したりしたらヤバいんじゃない?」

「少なくとも記録には数百年前から噴火どころか煙も上がっておりません。だからこうしてオズマも繫栄しているんですよ」

 やがて堅牢な城壁に囲まれたオズマの大きな門を潜り抜けた先、内部は石造りの街並みが並び外の自然な景色とは違う、人工的な賑やかさは現代人の貝紫に感動を与えた。

「凄い! こんなに人が多い場所は初めてだ!」

 異世界スプリジョンに来て、ここまで活気づいた場所は他に見たことがなかった。大通りを行きかう様々な格好をした人の波。並んでいる露店には見たことのない色鮮やかな薬草や果物。広場には大きな噴水が陣取り、街中を縦断する大きな川には小型のボートが行き来をしている。元の世界ではゲームや本の中でしか見たことのないような光景が、実際に目の前に広がっている。

「こんなにも賑やかな場所に来れて、俺は今猛烈に感動している!」

「ええと、主……少しいいですか?」

 こほんと咳をして、シノーメが改まって言う。

「何だシノーメ?」

「あまり大きな声を出したり、きょろきょろ大げさに辺りを見ない方が賢明ですよ……」

 はっと気づくと近くにいた通行人、見回りをしている衛兵にじろじろと見られていることに気が付いて。貝紫は恥ずかしくて反省をした。

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