9節目
「これが僕のグラマトン。凄いだろう!」
得意げにロッソが胸を張った。確かにこのグラマトンであれば、敵の軍隊もあっという間に吹き飛ばせるだろう。
「これを使って僕は勝負するつもりだけど、貝紫はどうするつもり?」
「俺には別のグラマトンがある。それで無効化してやる」
貝紫のグラマトンは今まで直接相手を傷つける様なグラマトンは持っていなかった。魔物を退けたり、動きを止めたりとそういう物ばかりだ。最初におぼえた魔物を退けるグラマトンは前に魔法で動く泥の怪物にも効果があった。だから、同じグラマトンでも無力化できるはずだと貝紫は思った。
「戦場で鍛えられた僕のグラマトン、負けるはずがない」
距離を取って向かい合う。グラマトンを使う御使い同士の戦いを兵士たちが見守っている。
「ヴォイ・ド ア コルダー!」
「リオ アム オーデ!」
二人がグラマトンを唱えると、ロッソの唱えたグラマトンは空間が歪んで見えるほどの衝撃波を放つ。貝紫のグラマトンは光の奔流がその衝撃波にぶつかってせき止める。まるで獣同士が戦い合うような激しい音が二人の間で響く。
「うわあ!」
声を上げたのは貝紫の方だった。グラマトン同士がぶつかり合った後、相殺されることのなかったロッソの衝撃波が貝紫を襲った。威力が弱まったとはいえ、小さな体が浮いて後方に吹っ飛ばされるほどの衝撃が貝紫を襲った。
「ははは、まずは僕の一勝だ!」
ロッソが嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ。最初のグラマトンでこちらの強さが証明された。貝紫が何かしなければ、このままロッソの勝利は目に見えていた。
貝紫が這いつくばったまま考える。ロッソに勝つには何かが足りない。
「早く立てよカイ! 次で勝負を決めてやるんだから!」
ロッソの言う通り、自分に足りない物に早く気づかなかければ次の勝負で敗北が決定する。一体何が足りないのか……。
「わが主、貝紫様!」
大きな声が響いた。他の兵士たちが驚くほどの大きな声だ。それが貝紫たちにも届いた。声の主はシノーメだ、
「私は貴方の歌声が好きです。あの澄んだ声、まさに神の歌声!」
シノーメが叫び続ける。こんな状況でいきなり貝紫の声をほめたたえるなんてちょっと恥ずかしい。
「だから歌って下さい。その美しい声で神の言葉を!」
そう言ってシノーメは貝紫を見る。先ほど貝紫が自分の勝利を信じたときのように、彼も自分の主人の勝利を信じている。
「何かお前の従者、ちょっと変だな。まあいい、早く次の勝負だ!」
確かにシノーメは貝紫に対し盲信にも似た忠誠心を持っている。だが、貝紫は思い出した。声は小さくてもグラマトンは発動することを。では、グラマトンの強さを決めるのは何なのか。声の大きさか、それとも別の何か方法があるのか、貝紫はそれが何なのか気づいたようだった。




