8節目
ロッソが敗北を宣言すると、シノーメはゲオルの拘束を解いた。すると、シノーメには目もくれずゲオルは立ち上がってロッソの前に跪く。
「ロッソ殿! 私はまだ負けていません! もう一度立ち会わせてください!」
「見苦しいぞゲオル、お前はしてやられたんだ。僕も信じられんが、槍で突いたお前の方が落馬して、組み伏せられた。これが敗北でなければ何だというんだ?」
一方、シノーメに貝紫が歩み寄る。その表情は信頼と労いに溢れていた。
「ありがとうシノーメ。俺のために勝ってくれて」
「どんなものからもあなたを守ると誓いましたから」
シノーメは兜を脱ぐと、主人に笑みを返した。主人と従者、旅を通して二人の信頼じゃ確かなものになっていた。
「それで、決闘の結果だけど……」
決闘の結果は引き分け一、敗北一、勝利一。勝敗は引き分けと言う結果だが、それで終わらせるロッソでかなかった。
「やはりここは、主人同士で勝敗を決める必要があるな」
ニヤリとロッソが笑う。一騎打ちで潔く敗北を認めたのはこのためだなと貝紫は思った。
「いいだろう、ここまで来たのならしっかりと勝敗を決めてやろうぜ」
貝紫もすっかり乗り気になり、この勝負を受ける事にした。シノーメが従者としての信念を見せてくれたのだ。今度は主人として自分が信念を見せるべきだと貝紫は思った。
「勝負の仕方はそうだな。お互いにグラマトンをぶつけて、どっちが強いかでいいんじゃないか?」
正直な所、グラマトン同士をぶつけたら何が起こるか分からない。安全を考慮して砦の外で行うことになった。
「この勝負も三回勝負。引き分けたら勝敗が決まるまで繰り返す」
兵士たちは砦の城壁から固唾を飲んで見守っている。その中にはシノーメやゲオルの姿もあった。
「使うグラマトンは、僕の憶えてる奴でいいかな? 特別に聞かせてやるから、それでどちらが強いかを決めるんだ」
そう言うと、ゲオルは見上げて空に向かって、大きく息を吸い込んだ。大軍を退けたというグラマトンがついに明らかになる時が来た。
「ヴォイ・ド ア コルダー! (我は 力で 打ち負かす)」
ロッソが空に向かってグラマトンを言い放つと、そのまま発した言葉が空気を震わす衝撃波となって空を飛んでいき、そのはるか先に見える雲を抉った。




