6節目
「すいません主、奴の強さを見誤りました」
試合の後、シノーメが頭を下げる。しかし、さっきの話を聞き実際に戦う様子を見て、ゲオルは相当な手練れであることは分かった。
「それで、本当にやるつもり? 次の一騎打ち」
ロッソが得意げな笑みを浮かべて質問する。先ほどの勝負を見て、ゲオルの勝利を確信したのだろう。
「槍を扱うゲオルは一騎打ちが最も得意なんだ。その一撃は敵の盾すら簡単に貫くくらいにね。リッジ砦の修練でも戦場でもほぼ負け知らずさ」
貝紫はシノーメを危険にさらしたことを後悔した。本当なら自分が御使いかどうかなんてどうでもいいことなのに、そんな事のために彼が傷つくのは見たくなかった。
「シノーメ、もう十分だ。俺たちのま……」
「次の一騎打ちもこのままやり通します。準備をさせて下さい」
シノーメの言葉に貝紫もロッソも驚いた。実際にゲオルの実力を見ておきながらまだ、勝つことを諦めていないのだ。
「正気か! 次の一騎打ちは決闘の中で一番危ないんだぞ! 時には死ぬことだってあるんだ!」
「いくら俺のためだからって、無理はしなくていいんだ!」
敵側のロッソすら説得する。貝紫も周囲の者たちも、シノーメが騎士としてのプライドのために決闘をやめる事が出来ないのだと思っていた。だが、それは違った。
「主を守るために戦うのが私の本分です。だから守る前に逃げるわけにはいきません、絶対に」
「シノーメ……でも……」
「安心してください。私もみすみす負けるつもりはありませんから。次の勝負、必ず勝ちます。だから主は私を信じて待っていてください」
シノーメの表情からは自信は失われていなかった。貝紫が目を合わせると、シノーメにはまだ何か勝算があって言っているのだと分かった。そんな彼を見て貝紫もその覚悟を理解した。それならば最後まで、彼の主として付き合わなければならない。どんな結果になろうと。
「分かった。最後の一騎打ち、やってくれシノーメ。俺もちゃんと見届ける!」
「やれやれ、後悔しても知らないからな」
次の試合で決闘の結果が決まる。ロッソが合図を送ると一騎打ちの準備を促す笛の音がリッジ砦に鳴り響いた。




