3節目
「はあ? 何でわざわざそんなことしなきゃいけないんだよ!」
「だって、話を聞くと君はいろんな場所を旅してきたみたいじゃないか。僕はここでずっと諸侯同盟相手にずっと戦ってた。それでどちらも同じ力のままってのはおかしいと思わないか?」
「言っておくけど、俺は道中色んなグラマトンの言葉を見つけて力を使えるんだからな」
「へえ、じゃあだったらなおの事、試してみようじゃないか。どちらが本当にグラマトンを使えているのかってさ」
ロッソは自信があるのかとても強気な態度だ。その二人の間にシノーメが割って入る。
「主たち、少し頭を冷やすんだ。そんなことをしても何の意味もない」
「そうですよロッソ殿。あなたは大切なお方。救世の御使いなのですから、無意味なことで力を使う必要はありません」
二人の従者が互いの主人を説得する。ロッソの従者ゲオルの言葉が貝紫は気になった。
「救世の御使い?」
「そう! この世界の予言に言われてる救世主、御使いって奴らしいんだよ僕は!」
異世界スプリジョンには一つの予言があった。梟と獅子が争い、三度炎の柱が上がると、世界の終わりが近づく。最後の柱が上がったとき審判の火で世界は焼かれ、多くの命が失われる。混沌の中、救世主が空から現れて残された生命を救い、楽園を創造すると。丁度この戦争が始まった頃から囁かれるようになった物らしい。それに加えて、神の言葉グラマトンを使い奇跡を起こす者を、この世界では御使いと呼ぶと。
「梟と獅子は聖教国と諸侯同盟の戦争を現し、空から……他の世界からやってきて神の言語グラマトンを使える僕は救世主、御使いにふさわしいと思えないかい?」
「それを言ったら俺だってそうなるじゃないか。それに柱が上がるって俺が初めて力を使ったとき、グラマトンが柱のように光が伸びたぞ!」
「だから決めたいんだ。どちらが本物の救世主、御使いは僕だってことを!」
予言、救世主、御使い……初めて聞いたが、神の言葉グラマトンを扱えるのも世界を救うためなら納得がいく。
「駄目ですよ主、そんな挑発に乗ったら」
グラマトン同士がぶつかったら何が起こるか分からない。ただでさえ強力な物なのに周囲にどんな影響が及ぶか貝紫も想像がつかない。
「ロッソ殿、グラマトン同士でぶつけ合って何が起こるか分かりません。ですから軽率な行動はお控えください」
どうやらロッソの従者のゲオルと言う人物は話が分かりそうだった。冷静にロッソをたしなめる。
「代わりに従者である我々が、主の代表として戦います」
そう思っていたら、ゲオルの口からとんでもない言葉が出た。従者である自分たち騎士同士が戦うと言うのである。それはいわゆる決闘と言う奴ではないだろうか。
「おい、何を言っている。そんなことする必要はないだろう」
シノーメが口をはさむと、ゲオルはにらみつけた。
「主のために働くことが騎士の役目。主が戦えないのならば、我々がやらねばならぬと思わないのか?」
「シノーメ……」
貝紫はシノーメが戦う事自体を忌避している事を知っている。不安そうにシノーメを見る。
「大丈夫です主、決闘と言えど殺し合いをするわけじゃないですから」
決意した様にシノーメは顔を引き締めると、ゲオルに向かい自身の手袋を投げつける。
「いいだろう。主に代わって我々が、主が御使いだという事を決闘で証明しよう」




