2節目
山田ロッソは貝紫が元の世界にいた頃の友人で、聖歌隊のメンバーの一人だった。常に自分が一番でないと気が済まない性分で、聖歌隊で歌う時も一番声を張って歌うので、周りのメンバーが足並みをそろえるのに大変苦労していた。そして、何故か元の世界にいた頃から貝紫の事を勝手にライバル扱いしていた。
「主と同じ異世界から来た人間なら、本当にグラマトンを使えるかもしれませんね」
「でも、どうしてあいつがこの世界にいるんだ?」
ロッソに一歩近づくと、そばにいた兵士が立ちふさがった。貝紫の様な少年でも絶対に通さないという強い意志を感じさせた。
「通してやれゲオル。そんな警戒しなくてもいい。そいつらは僕の知り合いだ」
ゲオルと呼ばれた兵士が下がって、ロッソと貝紫は顔を見合わせた。この世界の格好をしているがやはり、自分の知っているロッソのようだ。
「こりゃ驚いた。まさかこの世界で知ってる顔に合うとはな。久しぶりだなカイ」
「それはこっちの台詞だ。ロッソはどうしてここに?」
ロッソは得意げに胸を張る。
「こう見えて、僕はここで指揮官をやってるんだ! 諸侯同盟って奴と戦ってるけど、僕のおかげで連戦連勝! なぜなら……」
「グラマトンが使えるからだろう?」
「なんだ、お前も知ってるのか。まあ噂になってるみたいだしな」
驚かせようと思っていたのか、残念そうにロッソの言葉が呟いた。どうやら本当に彼もグラマトンが使えるようだ。
「もし、俺もグラマトンを使えると言ったらどうだ?」
「何、どういう事だ?」
貝紫は自分もグラマトンを使える事をこれまでのいきさつを含めて話す。ロッソは熱心にそれを聞いていた。
「へえ、じゃあ前に南で見えた光の柱は、君がグラマトンを使ったからなんだねぇ……」
「この世界には気がついたら来てたけど、ロッソの方はどうだったんだ?」
「僕も似たような物さ。気づいたらリッジ砦の近くの森の中にいて、砦の衛兵たちに助けて貰った。そういう時に突然諸侯同盟の連中が襲ってきて、もう駄目かもと言う時にこの力に気が付いた」
ロッソが言うにはこの世界に来たのは大体一か月半前……丁度貝紫が来たのと同じ頃だ。
「確か俺たちボーイスカウトに行く途中だったけど、何でこの世界に来たんだろうな」
「カイは憶えてないのか? バスに乗って移動中にあんなことがあったのに」
ロッソが言うにはボーイスカウトに向かってるバスの中、途中の山道で大きな揺れが起こり、轟音と共に大きな土砂崩れがバスを襲い、ロッソは意識を失った。そこから気が付いたときにはこの異世界スプリジョンに来ていたという。
貝紫の記憶にはバスで起こった出来事の記憶がすっぽり抜けていたが、恐らくその出来事がこの世界に来る事になった発端なのだろうと納得した。
「それだったら俺たち以外のメンバーも来てるかもしれないな」
「これまで僕が会ったのは君が初めてだよカイ。他にそれらしい噂は聞いてないし、どうだろうね」
果たして自分たち以外のメンバーが、他にもこの異世界に来ているのかと貝紫が考えていると、ロッソが突然話を切り出した。
「なあカイ、僕たち二人どちらが強いかグラマトンの力を比べてみないか?」




