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美少年の声は世界を救うようです  作者: 八田D子
沼術師レンデルの歌劇曲
23/114

7節目

 レンデルが魔力を失ったことで、ドサの村人たちは魔法が解け、沼の魔物におびえる心配もなくなった。

だが、レンデルは研究のために貴重な村の貯えを消費させており、保存された食料は既に底をつきかけていた。

「いずれにしろ、これではドサの村を捨てざるを得ないでしょう」

「しかし、あの魔術師のせいで行商人すらここを通ろうとしない。一体どうすれば……」

 村長や村人たちは集まって今後の生活について相談していた。その場には貝紫とシノーメの姿もあった。

「主、我々は自分たちの旅を続けるべきではないですか? 彼らの事も気になるのは分かりますが……」

「うん、でもまだここの人たちの話を聞かせてくれないか」

 思えば最初に貝紫がいたミッカジ村も戦争で若者がいなくなり、捨てざるを得なかった。その時の

記憶が今のドサの村と状況が似ている。

「お二方は気にしなくてもいいですよ。これは我々の問題です。遅かれ早かれ、こうなることは分かっていたのです」

「でも俺はこうした人々も助けたいんだ。この力で……」

 貝紫が立ち上がった。この土地で手に入れたグラマトンが、頭の中で何かを主張している。

「ドサの人たち、俺について来てください」

 突然の貝紫の言葉に動揺が広がったが、貝紫にはきっと上手くいくという妙な確信があった。

 貝紫が向かった先は、ドサの村から少し南東にあるペーフォム湿地の中心部。沼の瘴気のたまり場であり、

ぬかるみや深い泥沼のある厄介な土地である。思えばここで最初に沼の魔物にも出会った。ここを

通れれば、ドサの村と他の集落を繋ぐ交易路になる。

 貝紫は深呼吸する。不快な瘴気が濃いが、僅かに新鮮な風の流れも感じる。その空気を入れ替える

つもりでグラマトンを唱えた。

「ア シュマ ホシテ! (力は 変える。その言葉をもって)」

 貝紫の言葉がペーフォム湿地全体に伝わるように、心地よい風が吹いて瘴気を吹き飛ばし、泥の地面がしっかりと

踏みしめられる柔らかな土となる、淀んだ沼の水が浄化されて青々とした空を映すほどの澄んだ湖となった。

 どんよりとしていたペーフォム湿地が、自然の生命力を感じる瑞々しい土地に生まれ変わった。

「これは凄い!」

「まさに魔法だ!」

「いや奇跡だ!」

 ドサの村人たちは驚嘆の声を口々に上げる。

「驚いた。いくら魔法でも環境そのものを変えるなんて聞いたことがない。これがグラマトンの力か……!」

「これなら他所との行き来も出来るし、農地の開墾だってできる! 行商人の人たちが来て

この事を知れば、話が広まってもっと人が来る。きっとにぎやかになる!」

 貝紫が自信ありげに答えた。人の喜ぶ声を聞いてとても嬉しそうだ。

「まさに聖主の遣わした救世主です! ありがとう。ありがとう!」

 生まれ変わったペーフォム湿地にはドサの村人たちの喜ぶ声がいつまでも響き渡った。

この出来事はやがて聖都オズマまで届き、ドサの村はやがて町になるほどの繁栄を見せる事となった。

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