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美少年の声は世界を救うようです  作者: 八田D子
沼術師レンデルの歌劇曲
22/114

6節目

 貝紫とシノーメは暗い洞窟の中を駆けていく。レンデルの姿は見えないが、道は一本道で

奥へと続いている。見逃すことはなかった。

「シノーメはどうやってここにたどり着いたの?」

「あの沼地の魔物から逃げた後、村長の話で炭鉱の事を思い出しましてね。地図の記憶を頼りに

探し出したら、主の声が聞こえてきたのですよ」

 すると、ここはドサの村の近くにある古い炭鉱だったのか。貝紫は気づいた。

「魔術師は出口とは反対方向に奥へと逃げたみたいですが、何か罠があるのかもしれないので気を付けて下さい」

「何が来たってグラマトンの力で蹴散らしてやる!」

 貝紫が意気込んでいると、広い空間に出た。不思議なことに正面の壁が僅かに発光していて、その前にいるレンデルの姿を照らし出していた。

「追い付いたぞ。観念しろ!」

「ふふふ、私は待っていたんですよ。この場所で……」

 レンデルは不敵に微笑むと発光する壁に手をかざした。

「既に、この地に眠っているグラマトンはこうして掘り出していたのですよ。まさか実験する前にその力を使う羽目になるとは思いませんでしたが……」

 正面の光る壁に複雑な文様が浮き出る。壁の正体は貝紫の知らないグラマトンの言葉が掘られた壁画だった。

「まさか、グラマトンの力を使うつもりか!?」

「私の魔力で、グラマトンに画かれた力を引き出すわ! さあ神の力を自ら食らってみなさい!」

 空気を震わせるほどの力が洞窟中を満たす。シノーメが貝紫の正面に立って身構えるが、今までに

感じたことのない力だった。本当に防ぎきれるか全く自信はなかった。

「食らいなさい! ア シュマ ホシテ!」

 レンデルがグラマトンを唱えた。張り詰めていた空気が一瞬にして消え、嵐の前の静けさを感じさせた。

だが、それから一向に何かが起こる様子はなかった。

「……何か起こってる?」

「いいえ、しかし油断はしないでください主。これも奴の作戦なのかも」

 きょとんとする二人だが、レンデルの方は酷く狼狽えていた。

「何で何も起こらないの? ちゃんと唱えたはずなのに……もう一度!」

 再びグラマトンを唱えようと壁画に手をかざすと、今度はレンデルの身体から光が壁画に向かって放たれる。

「きゃああああああ!」

 レンデルが悲鳴を上げる。何が起こっているのか分からずぽかんとする貝紫たちだったが、レンデルの

身体から光が出なくなると、彼女は髪の白いみすぼらしい老婆になっていた。

「そんな、私の魔力が……全部吸い取られるなんて……」

 レンデルはその場に崩れ落ちた。シノーメが駆け寄って様子を見るが、命には別状はなさそうだった。

「どうやら、魔術師が無理にグラマトンを使おうとすると逆に魔力をすべて吸い取られるみたいですね。

これで村人たちも元に戻るはず」

「でも、ちょっとかわいそうだな」

 グラマトンは人知を超えた力と言っていたが、自分以外が使うとこんな事になるとは思わなかった。

「主が気にする必要はありません。この魔術師の自業自得なのですから。これでドサの村人も正気に戻り、

沼の魔物も二度と出る事はないはずです。戻って確かめましょう」

 すっかり意気消沈しているレンデルを連れて出口へとシノーメが案内する。

「ちょっと待って」

 貝紫は彼を引き留めた後、グラマトンの壁画へ近づく。既に発光するのも収まっていて一見すると

ただの文様が彫られた様にしか見えない。

だが、僅かな光が壁画から貝紫へ流れ込んでくる。先ほどレンデルが唱えたグラマトンの意味が

貝紫の頭の中に流れ込んできた。

「……うん、行こうシノーメ。これでさっきのグラマトンが使えるようになったと思う」

 書いてあるグラマトンは『ア シュマ ホシテ』。どんな力があるのかはまだわからないが、

今は使う時ではないと貝紫は思った。

「シノーメ、俺はこのグラマトンをちゃんと正しいことに使うよ」

 魔法を己のためだけに使ったレンデルの事を思い出して、貝紫はそう決意を口にした。

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