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美少年の声は世界を救うようです  作者: 八田D子
沼術師レンデルの歌劇曲
20/114

4節目

「いやあ大変でしたでしょう。よく無事に湿地を通ってこられましたね」

 村人に案内されて二人は村長の家にいた。ドサの村は教会すらなく、過疎になっていたミッカジ村

よりもさらに家屋がまばらで、廃村と見間違えそうなほど辺鄙な場所だった。

「元からそんな大層な村ではなかったんですが、魔物のせいでさらに寂れてしまいましてね……」

「村の人たちは普段はどうやって生活してるんですか?」

 貝紫は純粋な疑問を尋ねてみた。見た所家畜もいなさそうで、農地も全然見当たらなかった。

「実はこの辺りは昔から石炭が取れましてね。かつては炭鉱で栄えていた頃もありましたが、今は細々と

やっていきながら何とか食べていけてるような感じです」

「魔物も出ているのだから、相当きついでしょうね」

 貝紫が胸を張って答える。

「俺たちが魔物を追い払うから、安心してください!」

「それは頼もしいですな」

 はははと村長は貝紫に合わせて笑っていたが、シノーメの表情が険しいことに気が付いた。

 村に着いてから彼の様子が少し気になり、こっそりと耳打ちした。

「さっきからどうしたシノーメ、まだ傷が残ってた?」

「いや、主は感じないか?」

 貝紫はきょとんとする。

「何かって?」

「この村に何か違和感を……」

「どうされましたか?」

 貝紫は慌てて村長との対話に戻る。

「いや何でもないです! それより、魔物について何か知っていることはありませんか?」

「それが全く分からないのです。お力になれず申し訳ない……それより疲れてはいませんか?

この村は宿がありませんので、うちで今晩は過ごしていって下さい」

 魔物退治は明日に持ち越して、貝紫たちは村長の好意に甘える事にした。


***


「シノーメ、いくら何でも心配性すぎるんじゃないか?」

 シノーメはいつ魔物が現れてもいいようにと一人で一晩中起きているつもりだった。貝紫の泊まっている

部屋の前で座り込み、まるで誰も部屋に入れないようにしてるみたいだった。

「主、俺はこの村の連中が少し信用できないんですよ。魔物の脅威におびえていたはずなのに、

妙に呑気だったり、不用心に外に出てきたり……」

 確かにこれまで魔物のせいで外部と接触が絶たれていた割に、自分たちを見てもあまり驚いてる

ようには見えなかった。

「でも、実際に村の人たちは無事みたいだからよかったよ。何かある前に俺たちが来れたならさ」

 魔物によって自分たちが来る前に村が壊滅していたら、きっと貝紫は心にずっと引きずる事に

なっていただろう。

「俺がこの世界に来た時も、住まわせてくれたミッカジ村って場所が魔物に襲われて大変だったんだ。

グラマトンの力がなかったら、今頃ミッカジ村も俺もここにいなかったしシノーメにも会えなかった」

「主……」

「村の人たちが何か隠してたり考えていたとしてもさ、今は魔物を追い払う事に集中しようぜ」

 昔の山賊生活の時ならば、決してそんなことは考えられなかった。だから彼に仕えようと

シノーメは思ったのだ。

「そうですね……それでしたら、自分も少し休ませてもらおうと思います」

 寝室に入ろうとしたとき、ふらりと村長がやってきた。寝ぼけているのか締まりのない顔をしている。

「どうかされたか村長殿。こんな夜更けに……」

 突然村長が掴みかかってきたのをシノーメはさっと身を躱した。

「何をする!」

 ドアを破って村人たちが数人なだれ込んできた。その手には鎌やこん棒などの武器を持っている。

「主、村長たちの様子がおかしい!」

 貝紫にも声をかけるが返事が返ってこない。シノーメは背筋が寒くなるのを感じた。

「主、返事をしてくれ!」

 村人の一人が大振りに武器を振り下ろす。シノーメは用意していた盾で受け止めると、他の村人に

向けて攻撃してきた者を蹴り飛ばす。

 村長が背後からシノーメを羽交い絞めにするが、こちらは訓練を積んだ元騎士だ。力づくで無理やり

引きはがし、背負い投げで投げ飛ばす。

「主!」

 他の連中には目もくれず、寝室の扉を開けて貝紫の無事を確認する。だが、そこには貝紫の姿はなかった。

 窓が開け放れているが先ほどの争いの間に連れ出されたのだろう、シノーメは己の不甲斐なさを呪った。

 急いでシノーメは窓から外へ飛び出す。見回すと猿轡を嚙まされた貝紫が、他の村人たちに連れ去られているのを見つけた。

「んむむ……!」

「主!」

 口をふさがれてはグラマトンも使えない。シノーメが貝紫を助けに向かおうとするが、

それを大きな影が遮った。

「オオオオオオ!」

 日中に出会った沼地の魔物だった。何故村の中にいるのか。疑問に答える者もおらず、魔物は

シノーメに襲い掛かる。

 怪物に襲われるシノーメの姿を最後に、目隠しをされた貝紫はなす術もなくどこかへと運ばれてゆく。

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