閉幕
「それじゃあ、あの冒険はやっぱり夢じゃなかったわけだ」
「他の人に言っても絶対信じないだろうし、僕たちだけの秘密だね~」
病院を退院した後、早速ロッソとフランツの2人と会った。話をしてみるとやはり、彼らもスプリジョンの事をおぼえていて、あの冒険が夢でなかった事が分かった。
「結局、僕らが戻った後のスプリジョンは無事なのかな」
「あの世界の神様、聖主だっけ? そいつがもういいと思ったんだから俺たちもこっちの世界に返されたんだろうさ。だから向こうの世界もきっと無事だよ」
「まだまだあの世界でやりたいことがあったけれど、役目を終えたらはいさようならっていい加減だよね~」
確かにスプリジョンではまだやりたいことがたくさんあった。行ったことの無い場所、まだ会った事のない人々、不思議な力や景色。スプリジョンにはそういう物がたくさんあった。もし叶うならもう一度あの世界に行ってみたい。
「そういえば一度試してみたんだけどさ。やっぱりグラマトンはこっちの世界じゃ使えなかったぜ」
頼みのグラマトンもやはりこちらの世界では使う事は出来ないようだった。あの能力があれば、まだ可能性はあったかもしれないのに。
「でも、もしまた何かあったら次も僕たちがスプリジョンに呼ばれるのかな~」
「その時はまたこの俺が大活躍して、次こそみんなに救世主として崇められたいな!」
次の可能性……フランツの言う通りそんな奇蹟がきっとあるかもしれない。もしかしたら、またあの異世界に行くことができるかもしれない。その時は、まずシノーメにまた会いたい。そしてムークお爺さんにも。今まで会ってきた人たちにお礼を言って回りたかった。それからまだ言っていないスプリジョンの未知の場所へ旅をしたい。
「ヴォイ・ド マス(主よ 再び)」
思わずグラマトンを唱えていた。空間を越えて繋げる力を持つ言葉だ。
「だからカイ、グラマトンはこっちじゃ使えなかったんだって、さっき言っただろ?」
「分かってるよ。懐かしくて思わず声に出しちゃっただけさ」
その時、パリンとガラスが割れる様な音が聞こえた。音のした方へふり向くと空間にひびが入っていて、はじける様に穴が開いた。その空間の穴には異世界スプリジョンの景色が広がっていた。奇跡が起こる可能性とは決して0ではないのだ。