8節目
「な、待て!」
貝紫の制止も空しく、サウリアとダマーは噴煙とマグマの煮えたぎる地獄の窯へと沈んで行った。
「畜生! 無責任だ! 今からでもやり直す事は出来たのに!」
貝紫は地面を叩いた。その肩に従者であるシノーメが手を添えた。
「彼は自身の罪に耐えられなかったのでしょう。例えやり直せると分かっていても、これまで犯した罪を清算するには、孤独過ぎたのです……」
正しく過ちに向き合えたとしても、その罪悪感に心が耐えられるかまでは分からない。己が負の感情を拗らせてスプリジョンに混乱を蒔いたことを理解してしまったからこそ、ダマーはその罪の重さに耐える事が出来なかったのだ。
もしも、彼に心から信頼できる人間が一人でもいたら、こんな事は起こさなかったかもしれない。しかし、今となってはそれも考えられる可能性の一つに過ぎない。
「それより、ダマーが言ってた通りまだ終わっちゃいない。サントロンの噴火はまだ止まってはいないんだ!」
地面の揺れが激しくなってきた。噴火するまでもう猶予がないという事だろう。
「どうするの~今にもドカンと行きそうだよ~?」
ただでさえ大きな火山で魔法の力を使ってエネルギーを数百年分溜まりこませた噴火だ。もし噴火したのならば、噴き出たマグマは平地へと流れ込み、多くの自然や生命を焼き尽くすだろう。そして噴煙は太陽を隠し、大量の粉塵が地表を覆いつくす。その光景はまさに世界の終わりだ。
「どうする? そう考えてる時間もないぜ……」
貝紫は全神経を集中して対策を考える。噴火の力はきっととてつもなく強大だ。流石にグラマトンでも抑え込める自信はない。ふと、クシャロでのやり取りを思い出した。スプリジョンという世界が地球と同じ様な星だったら?
「今、一つアイディアが浮かんだ。でも、成功する確信はない……」
貝紫がそう言うと、ロッソとフランツが顔を見合わせた。
「今更何でもいい! 思いついたのがそれだけならやるしかないだろ!」
「それに今までだってカイのお陰でやってこれたんだ。きっと今回も上手くいくって~」
2人の言葉に貝紫は覚悟を決めた。
「ありがとう2人とも。この作戦、3人でやらないときっと駄目だと思う。だから2人にも手伝って欲しい」
「ここまで来て何もしない奴がいるかってんだ! 早くその作戦って奴を教えろよ!」
「絶対成功させるから、やっちゃおうよ~!」
貝紫は2人の御使いにかいつまんで作戦を伝えた。最初は驚き、不安になった2人だったが、他に妙案があるわけでもない。だから貝紫の作戦に2人も賭けることにした。