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魔力の宿る星  作者: イシヤド
第一章
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1-7 新しいこと

 

 魔獣の森に行った翌日、アルは授業を受けていた。今回は、教室ではなく物質研究室で授業をやるということで、生徒達は何をやるのか気になっているようだ。


 前には教卓があり、水道が全ての机のすぐ近くにある。そして机の上にはバケツが何個か置かれている。


「授業を始める。今日は魔力の節約についてだ。魔法の発動とは別に、魔法の維持には更なる魔力が必要だ。その魔力は、魔法を使うときのイメージが現実と離れているほど多い。


魔力を宿す物質は別として、身近なものは、魔力がなくても存在し続ける。それから離れるということは、存在し続けるためには離れた分を補わなければならないということだ。そのために魔力がいる。


ちなみに、魔法を全く魔力を使わず維持することもできるが、それは現実に存在するか、存在しても問題ないような物質でなければいけないし、非常に細かいイメージをしなくてはならない。トップレベルの魔法使いでもできる者が少ない技術だ。


話が逸れたが、今回は現実をイメージするために、身近なものを用意した。水、葉、土、とまあ色々とある。取り敢えず触ってみろ。後、お前ら第五クラスに渡されたものは量が少ないから、大事に使え。それじゃあ始め!」


 それぞれ小さいバケツに一種類ずつ物が入っている。


「うわ、これ泥かよ。」


「汚ねぇ。」


「魔法で泥団子でもつくれってか?」


 男子達が泥の場所の前に群がっている。アルはそこに割って入り、泥に手を突っ込んだ。


「まじかよ……。」


(ネバネバしてるな。これは意外と使えるかも。)


「あぁそうだ。分かってるとは思うが、泥とか土とか触ったら机の横の水道で手を洗っとけよ。」


「はい。」


「後並んでる所は一人三十秒で交代しろよ。」


 ブランが注意をすると、水をずっと触っていた生徒が交代する。


「水道でずっと水触れば良くね。」


「駄目だ。水の無駄遣いは許さん。」


 ズルをしようとしていた生徒を、ブランが咎める。

 

 アルが言われた通りに水道で手を洗っていると、アレクが話し掛けてきた。


「やあ。魔獣の森はどうだったかい?僕はネイルバットという魔獣を倒したよ。中々に素早く厄介な敵ではあったが、この僕には敵わなかったということさ。アルは何を倒したんだい?」


「俺はボーンラビットだけど。」


「ほう。ボーンラビットか。僕も見たよ。あれも素早かったねぇ。それに非常に凶悪そうな見た目をしていたね。やはり僕の目に狂いは無かったということか。」


 アルがアレクと話していると、フレイマーが話し掛けてきた。


「俺だってマゲオッターってやつを倒したぜ。」


「うん。これで更に自信がついたよ。君は馬鹿なようだね。」


「はぁ!?何でだよ!」


「マゲオッターって、ボーンラビットやネイルバットより格下の魔獣じゃないか。それを自信満々に言ってきても困るんだよねぇ。」


「俺はたまたまマゲオッターに会ったから倒しただけだ!俺がやろうと思えば、ネイルバットだろうがボーンラビットだろうが倒せてた!」


「僕はそういう話をしている訳ではないんだよ。君が、弱いマゲオッターを倒したことを自慢気に言うのが馬鹿だと言っているんだ。自慢できるようなことではないのにね。」


「ぐ……。べ、別に良いだろうが!」


 そう言ってフレイマーは去っていった。


(二人の仲は相変わらずだな。泥は使えそうだし、実際に魔法を使いたいな。先生に聞いてみるか。)


「先生、今泥を触ってみて、魔法で作ってみたくなったのですが、良いですか?」


 アルがそう言うと、ブランが納得いかないような表情をする。


「ん?どういうことだ。もう作れそうなのか?」


「はい。」


「そうか?まぁ良い。このバケツの上で作れ。」


 バケツに予備があったのか、ブランはバケツを取り出す。

 アルは、手をバケツの上にすると、泥を生み出し始める。


「これは……。」


 ブランはそれを見て思考する。


(泥はアルが良く使う土に似ているし、少しイメージが曖昧で、魔法の発動を魔力に頼っているところがある。しかし、この短時間で魔法を成功させるというのは……才能か。


アル……膨大な魔力量だけでなく想像力も高い。マギから聞いた話だと、精神力も高い。魔力の制御についても克服しているようだな。問題はない。かなりの逸材だ。こいつは強くなるんだろうな……。


くそっ。くだらない感情が涌き出て来やがる。大人の俺が、子供に嫉妬するほど見苦しいものはない。俺は既に夢を諦めた人間なんだ。)


「先生、どうかしたんですか。」


 アルは、泥を見つめながら悩むような表情をしているブランが気になり、そう問う。


「いや、何でもない。もう泥を作れるようになるとは思わなかったから、驚いただけだ。」


「そうですか。」


 アルは何となくその答えが嘘であると気づいていたが、アルにとっては大して興味があることでもなかったので、深くは聞かなかった。


 今アルが考えているのは、泥の使い方についてだ。


(相手に泥をぶつけられれば相手の機動力を削げるな。目に当たればある程度視界を塞ぐ効果も期待できる。泥の中を空洞にして火を紛れ込ませるってのも良いな。


固めるのは土より泥の方が簡単だから魔力消費も少ない。今は射出速度を上げる訓練をしているけど、泥を作る訓練も少ししてみるか。)


「やあアル。何やら新しいことを思いついたようだね。そういう顔をしているよ。」


 アレクが、俯くアルの顔を覗きこむようにして話し掛けてきた。


「あぁ、まあちょっと。」


「そうかい。実はね、僕は試してみたいと思ってたんだよ。僕の魔法が君にどう対処されるのかをね。」


「戦いたいってことか?でもそれは……」


 アルができないと言おうとすると、アレクはそれを遮るように話し始める。


「あぁ、わかっているとも。授業以外での模擬戦は、危険だから許可されていない。なら戦わなければ良いだけだ。僕がしたいのはね、魔法を試してみることだよ。」


「つまり戦うんじゃなく、アレクが撃った魔法を俺が見て、実際に撃たれたと想像して、俺がそれにどう対処しようとするのかを聞きたいってことか?」


「そういうことだね。いやぁ、理解が早くて助かるよ。」


「確かにそれならできるか。」


「そうさ。ただ、それだけだと君がこの話を受けるメリットが少ないだろう。だから、君が思いついた新しい魔法というものを、僕に見せてくれ。そして僕が君に意見を言う。これならどうだい。」


「ただそれだと俺の手の内がアレクにバレてしまう。アレクが見せるのは既に使っている魔法だけど、俺が見せるのは新しく考えている魔法だ。」


「君は警戒心が強いね。君は敵にすると手強いと思っていたけど、その思いがますます深まったよ。一応聞いておこう。君が僕をそこまで警戒する理由は何だい。」


「この学校では、前に模擬戦でクラス内の順位が決まったように、どのクラスなのかと、クラス内順位が何位なのかは、戦いによって決まる可能性が高い。その時にアレクと戦うことになる可能性は十分にある。だからだ。」


「やはりそうか。僕もそう思っていたんだよ。君が言うことももっともだ。ならこういうのはどうだい。僕は君が泥を使うんだろうというところまでは想像がついているんだ。


だから君は普通に泥を使ってくれ。そして僕がそれにアドバイスをする。こうすれば君は必要以上に手の内を明かさないで済むだろう。」


「アレクは泥の使い方を知っているのか?」


「詳しいわけではないよ。あくまで、他者からの視点ではどうした方が厄介になるかを言うだけさ。だからアドバイスできないかもしれないが、その時はまた別のことのアドバイスをするよ。」


「そうか……。」


 アルはそう言って、俯いて考え込む。そして答えを決めたのか、顔を上げる。


「わかった、やろう。」


「それは良かったよ。良い訓練にしよう。」


「あぁ、そうだな。」


 そう言って二人は握手をした。

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