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魔力の宿る星  作者: イシヤド
第一章
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1-5 魔獣の森


 オォォォォ……


 風が流れ音が流れる。魔獣の森、それは危険な森。その中に住む魔獣同士は喰らい合い、弱い魔獣は逃げる道を選ぶ。逃げた先で、飢えた魔獣はいつでも侵入者に牙を剥く。


 木は赤、黄、緑、青に加え、黒、白、灰、紫、茶など様々な色をしている。その高さは50メートル程もあり、奥に行くにつれて更に高くなる。


観測したところ、奥のものは推定で200メートル以上あったという。その中でも一際高い木があり、その木の高さはなんと推定1000メートル程。


これはあくまで一つの魔獣の森の観測結果であり、魔獣の森は世界に複数存在する。そして1000メートルの高さを遥かに超えるような木も存在するのだ。


 その一例として、世界一高い木として有名なウッデストという木がある。この木の高さは未だ明らかになっていない。なぜなら、この木の周りをずっと雲が覆っているからだ。


ならばと雲の上を魔法で見ようとしても、厚い雲の中でウッデストの周りに住む空を飛ぶ魔獣に、壊されるか殺されるだけである。


 そしてそんな魔獣の森に、アル達は足を踏み入れようとしていた。


「これから入るのは、危険な場所として有名な、あの魔獣の森だ。お前ら、心の準備は良いか?」


「当たり前です。」「大丈夫です!」「問題ねぇ……ないです。」「だ、大丈夫です!」「大丈夫です。」


 生徒の顔を見て、マギは満足そうに頷く。


「よし。今から魔獣の森に入るわけだが、森の中では常に警戒心を持つようにな。不用意にその辺の物に触るなよ。


それに余計なお喋りも厳禁だ。音に敏感な魔獣は多い。それでは行くぞ。俺の後ろについてこい。」


 そして一行は魔獣の森に足を踏み入れる。


───


 魔獣の森の中、木漏れ日が照らし、暗くはない。木のいくつかには実がなっており、根にはカラフルな、又は毒々しいキノコが生えている。草が生い茂っているのかと予想する者は多いが、草の多くが足首にも届かないほど短い。


「魔獣がいた。あれはマゲオッターだな。」


 マゲオッターとは、カワウソの魔獣である。体が柔らかく、まるで紙を折るかのように曲げることができる。奇襲をすると、おったまげて飛び跳ねることでも知られている。


 最弱の魔獣として有名であり、肉をなかなか食べられず、草も食べられるように進化した。殆ど草を食べていることからグラスハンターとも呼ばれる。


数が多く、魔獣の森の草が短いのは殆どマゲオッターのせいである。


 最弱とは言え魔獣は魔獣。その身体は肉を求めており、隙を見せれば容赦なく襲い掛かってくるだろう。


「それじゃああいつを魔法で殺してみろ。誰でも良い。」


「私がやりましょう。」


「おっ、マルティか。頑張れよ。」


 第一クラス一位、マルティ·マテリア。その実力は勿論、非常に高い。


「それではいきます。」


 そう言ってマテリアはマゲオッターに手を向ける。マゲオッターは何かを察知したのかその場から逃げ出す。しかし……


「キィッ!?」


 チュンッ……


 マテリアの手から放たれた何かは、高速でマゲオッターの頭を貫いた。マテリアは、家に代々伝わる複数の物質を組み合わせた物質を生み出す魔法を使うことができる。


「速っ!?」


 難易度が高い魔法を使えるだけでなく、その速度はアル達第五クラスとは比べ物にならないレベルで速い。


「これは……凄いな……。」「マジかよ……。」「す、凄いです!」


「やるなぁ。俺も最初見たときは驚いたよ。十歳がこんな魔法を!?ってな。」


「私はこの程度で満足するつもりはありません。」


 そう言って鼻をフンッと鳴らすマテリア。しかしその様子はどこか嬉しげであった。


「おっと。喋っている内にまた魔獣が来たみたいだぜ。あいつはボーンラビットだな。音に引き寄せられたか?


ボーンラビットは奇襲が得意な魔獣だ。音で先に敵を察知し、角とか牙とか爪とかで相手を殺す。今回は先に見つけられたな。」


 ボーンラビットは兎の魔獣である。骨が発達しており、角や牙、爪として体外に出てきている。また、骨が発達したことにより肉体も強化され、身体能力が上昇している。


足に生えた毛は音を吸収し、相手に気づかれないまま相手を殺す、危険な魔獣である。


 ボーンラビットはこちらの様子を伺い、生徒の一人がボーンラビットに手を向けた瞬間走り出した。


 生徒達はそれを見てボーンラビットの突進を避けようと動く。アルを除いて。


(これはチャンスだな。こいつは俺がやる!)


 ボーンラビットがその脚力でアル目掛けて飛び上がる。


(ここだ!)


 アルは手を前に突き出し、分厚い土の壁を造り出す。ボーンラビットは、空中で止まることなど出来る筈もない。その角が土の壁に突き刺さる。


「キュイ!?」


 危機感を覚えたのか、ボーンラビットは慌てて、壁から離れるために壁を蹴ろうとする。が、後ろには手に火を纏ったアルが、拳をボーンラビットの足に向けて突き出していた。


「キュ……。」


 ゴオッ!


 足を燃やされたボーンラビットは最早何も出来ない。アルはトドメに土の槍をボーンラビットに放った。


「フンッ。」「おぉ、凄いじゃないか!」「チッ、根性だけは一丁前ってか?」「す、凄いです!」


「危機に立ち向かえるというのは、危険でもあるが、非常に役に立つ。お前らが魔法使いとして魔獣を殺すことを仕事にするのなら、必要になってくる能力だろう。凄かったぞ、アル。」


「ありがとうございます。」


「さて、魔獣を殺していないのは後三人か。一人だけで魔獣を殺させたい。このメンバーならできるだろう。だから、次魔獣を殺す者を決めたい。そしてその者だけで魔獣を殺す。次やりたい者はいるか?」


 すると、三人全員が手を挙げる。


「そうか、だったら次はフォーウッドだ。」


「チッ、クラス順かよ。」


「ごめんね、すぐ終わらせるから。」


「で、魔獣を探すわけだが、魔獣の森におけるそれぞれの地帯の境界線というのは曖昧なものなんだ。


だから安全に配慮してこの周辺で探すことになる。……っと、探すまでもなかったようだな。あいつはネイルバットだな。爪に気を付けろ。」


 ネイルバットは蝙蝠の魔獣である。ヤンキィという特徴的な鳴き声で有名だ。危険という意味で特徴的なのは、その五つの爪。


先端が螺旋状になっており、爪を回転させながら相手に打ち込む。すると、ネイルバットは直ぐに爪を翼から離す。爪は直ぐ生え代わる。


そして、打ち込まれた爪は相手の血液を吸っていき、伸びていく。早く抜かなければ相手は死に至る。しかし早く抜いたとしても傷は深い。


しかも空を飛び、すばしっこいので厄介な魔獣である。


 ネイルバットは周りを飛び回っている。こちらの隙を窺っているようだ。グラスが手をネイルバットに向けた瞬間、接近してくる。するとグラスは大量の葉を生み出した。


「ヤンィキィ!?」


 すばしっこいネイルバットでも、流石に大量の葉を避けきることはできない。羽が一枚の葉に当たり、動きが鈍ったところに次々と葉が向かう。


そうして翻弄されるネイルバットに、グラスがトドメを刺そうと根を生み出そうとしたその時だった。


「うわっ!?」


 ボーンラビットが大量の葉の中を突っ切って、グラスに向かってきたのだ。

ヤバイです。ストックが後一話……。次の更新は明日です。その後遅くなるかもしれません。

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